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転身したら建設パーソンだった件【01】人材サービス会社社員、止水工事会社「ベイプラン」を継ぐ

転身したら建設パーソンだった件【01】人材サービス会社社員、止水工事会社「ベイプラン」を継ぐ

「なかなか人が入ってこない」あるいは「すぐに人が出ていってしまう」。

昨今の建設業界でよく聞かれる話である。

では、そんな建設業界に、やる気に満ちた異業種の人材がポンと入ってきたら? 「そんな人そうそういないし、入ってきてもうまくいくわけがないよ」なんて拒否反応に近い声が聞こえてきそうだ。でも、それは、既成概念に囚われているだけで、彼らこそがいきなりブレイクスルーを起こすのかもしれない。

この不定期連載では、異業種から建設業界へ飛びこんで奮闘する建設パーソンをご紹介していく。


事業承継は突然に

木下啓弥さんは、名刺を交わすなり、「“キノシタ”ではなく“キシタ”です。わたしの故郷である岐阜県の高山で多い苗字なんですよ。営業の場合、第一印象はバッチリでしたね」とさわやかな笑顔で語った。

さすが、長く第一線で活躍してきたビジネスパーソンである。

彼はメーカー営業マンとして勤務ののち、人材サービス会社へ転職。人材派遣やアウトソーシング、さらに事業戦略や新商品開発に至るまで、「なんでも屋的な感じ」と本人が言うぐらいさまざまな仕事に取り組んだのだという。「仕事はとても面白かった」と木下さんは振り返る。当然、順当に出世もして、それなりの役職に就いてもいた。

それなのに、なぜまったくの未経験である建設業界に身を投じたのか?

「さまざまな仕事の経験を生かし、独立して、自分でなんでもいいから事業をやりたいと思うようになったんです。それでどんな事業をするかを考えると同時に、ゼロから立ち上げるかどうかを模索していたところ、ちょうどそのタイミングで、義理の父から『会社を継がないか?』と言われたんです」

義父は営業マンののち脱サラし、止水工事専門会社「ベイプラン」を一代で起こして経営していた。

木下さんは事業承継の話が出るまで、義父がどんな仕事をしているのかすら、よく知らなかったのだという。しかしよくよく話を聞けば、止水に関する特殊な技術を有していて、しっかりと顧客も掴んでいる。自分の理想とする事業イメージとマッチしていた。

木下さんはベイプランを継ぐことに決めた。しかし、この時点で建設業の知識はゼロである。安定したサラリーマンの地位を捨て、未経験の業種へ、しかも事業主候補として転身。不安はなかったのだろうか。

「『経験を生かし』とはいうものの、同じことの延長線上ではなく、まったくガラッと変わったことにチャレンジしたいな、とも考えていました。不安はもちろんありました。でも、とにかく前に進もう、と。すべてはタイミングの賜物ですね」と木下さんはあっけらかんと笑った。

建設業界の可能性を信じて

千葉県船橋市にある有限会社ベイプランは、従業員5名、年商1億3000万円ほどの小さな会社だ。木下さんは1年半前に入社し、現在は取締役として業務にいそしんでいる。

その業務内容は、おもにコンクリートの構造物において雨水や地下水による漏水の原因を調査、補修を行う止水工事である。なによりオリジナル工法の“プルシエ工法”が、同社の自慢だ。

そもそも、コンクリートはなぜ雨漏りするのか。木下さんいわく、環境の変化や地震の揺れなどによってひび(クラック)が発生し、すこしずつ大きくなっていくと水の通り道(水みち)となってしまうのだという。

コンクリート中の水みちは常人の目には見えない。ゼネコン関係者でさえも「水は分からない」と言うぐらいだ。原因の徹底的な調査こそが、ベイプランのセールスポイントである。

漏水の原因を探るため、徹底的な調査を行う。場当たり的な対処療法はしない。それがベイプランの流儀。

「水が漏れるところ、必ず水みちがあります。原因を突き止めないと水はいつまでも止まらない。調査の上でプルシエ工法によって、極力、躯体に傷をつけないように小さい穴をあけて、止水材料を注入し、水を塞ぎます」

具体的には、水みちに弾性の樹脂止水剤を注入する。

微細クラック専用止水薬剤のオリジナル材料「BP-KT」。主成分はアクリル系・エマルジョン樹脂。

「MYキーパーHG」というエチレン酢酸ビニル系樹脂を主成分とした止水剤も使用する。

こちらの器具を使用する。0.2mm(!)のクラックへの注入・止水が可能だ。注入後には3~6㎜の穴跡が残るだけだとか。

バキバキに固まらないため、地震の揺れにもしなやかに追従するそうだ。パッキンのようなものをイメージすると分かりやすい。

社長(義父)が生み出したこの工法、「同じことをほかにやっている会社の話はほとんど聞かない」(木下さん)というベイプランのオリジナル工法である。建設業未経験の木下さんが転身の際に着目したのは、この技術だ。

「前職で少なからずマーケティングも学んでいたものですから、2020年以降の建設業界がどうなるのかも予測した上で、建物が存在しそれが老朽化していく限り、“止水”という分野に必ずニーズはあると確信しました。衰退産業ではなく、むしろマーケットがまだ存在しないに等しい状態です。だから止水マーケットをこれから創るのは、とても面白い仕事なんじゃないか、と思っています」

木下さんは全国展開の夢を目を輝かせながら語ってくれた。彼は、根っからの仕事好きなのだ。

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「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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