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初開催の「東京都 建設業女性活躍セミナー」で“トイレ”が話題の中心になった理由

初開催の「東京都 建設業女性活躍セミナー」で“トイレ”が話題の中心になった理由

数日前の陽気がウソのように冷え込んだ小雨降る東京・表参道。東京都主催による「東京都 建設業女性活躍セミナー」が開催された。イベントの目的は「建設業界で働く女性の活躍推進について広く情報を発信するとともに、提言を行うこと」だという。

基調講演は一般社団法人土木技術者女性の会/鹿島建設(株)・須田久美子氏による「建設業における女性技術者の現状について」。ゼネコンで37年勤務してきたという須田氏は、東京都内で圏央道や中央環状品川線など、約10年の現場経験を持つ。

須田氏は新入社員の時、「土木技術者女性の会」が発足。そこでさまざまなロールモデルに出会い、キャリア形成において励まされたという。

1995年に起きた阪神大震災では、「日本が大変な時に、自分の研究成果を役立てたい」と母親に子供を預け、24時間仕事に没頭したそうだ。こうして企業内で研究に23年を費やし、2年の設計経験ののち、ついに47歳にて現場に出ることとなった。そこではコンクリートの研究者としての人脈をフル活用して現場工事を成功裏に終えることができた。須田氏が先鞭となって、いまや鹿島建設では、ドボジョが産休・育休を取得して現場復帰するのを当たり前にしようとしているそうだ。

「土木技術者に男性も女性もない。やりにくい・大変だと感じるなら、それは女性だからではなく、ひとりの人間として未熟なだけだ」と須田氏は言う。女性技術者・技能者の「見える化」を図るべきだと訴えた。

続いて、1時間ほどのパネルディスカッションでは、左から次のメンバーが登壇した。

(左から)

松本香澄氏(東京都都市整備局担当部長/公益財団法人東京都都市づくり公社区画整理部長)

山下絵里子氏(全国低層住宅労務安全協議会じゅうたく小町部会副部会長/大和ハウス工業(株))

畠中千野氏(一般社団法人日本建設業連合会けんせつ小町支援専門部会長/大成建設(株))

小池百合子氏(東京都知事)

須田久美子氏(一般社団法人土木技術者女性の会/鹿島建設(株))

女性にとって働きやすい環境整備とは?

モデレーターをつとめる須田氏が「女性にとって働きやすい環境とは?」と問うと、「低層住宅の小規模な現場では現場監督がひとり。また子供を保育園に預ける時刻より早く現場が稼働するので預けられないなどと訊くと、私はまだ子供はいないが、子育てを不安に思うことがある」と山下氏は言う。

一方、大規模現場を経験した畠中氏は「大規模な現場ではフォローできる人間の数はいる。ただし“経験工学”といわれる建設現場ゆえ、女性が産休・育休を取得したことで劣等感を感じることもある」と語った。

ここで話題になったのは快適なトイレの重要性だ。建設現場で使われる仮設トイレは和式が多く、これがいざ何かあった際には被災地などで活用されることになるのだ。「建設現場において快適な洋式仮設トイレの設置が増加すれば、非常に大きな波及効果がある」と山下氏は話す。それに対し、小池氏は「有事を踏まえ、トイレの洋式化と清潔化は来年度予算に盛り込むべきかも」と強く同意していた。

優先的に取り組む必要がある対策とは?

「会社は週休2日だが、現場はそうではないので、電話がかかってきてストレスを感じることもある。また最近の若手はプライベートを大切にしているので、それが業界の参入障壁になる場合がある」と山下氏は訴えた。畠中氏も「ゼネコンでも意識改革が必要。建設業界にいる男性はみなやさしく思いやりがある人ばかりだが、それゆえに男性にばかり仕事をやらせてしまう。そんな“無意識の偏見”を取り除く必要がある。本当の思いやりとは何かを考えていくべきではないか」と問いかけた。

発注者側である松本氏は「気持ちよく働く環境を作っていくため、発注側も法制化などで応援していく必要がある」と語り、小池氏も「働き方改革は世のトレンド。むしろ休むことで生産性を高めていくべき」と話した。

質疑応答では、「いま新入社員の3割が女性だが、しかし現場の仮設トイレは快適とは程遠い。ピンクではなく、もっとスタイリッシュで多用途なトイレがほしい」とトイレに関する関心の高さがうかがえた。

須田氏は「行政は主導的に一人ひとりの女性技術者・技能者を結び付け、その要望を掬い上げ、制約の多いなかでも多様な働き方を実現させてほしい」と締めくくった。

パネルディスカッションは短時間のため、やや不完全燃焼感があったが、今後とも同様の企画の継続開催を期待し、議論を深めていっていただきたいものだ。「工事現場の仮設トイレは、街の誰にとっても使いやすい」となる日まで……。

 

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「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部
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