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【建設×障害】「パーフェクトワールド」モチーフの車いす建築士が障害を抱えてはじめて得た“視点”

【建設×障害】「パーフェクトワールド」モチーフの車いす建築士が障害を抱えてはじめて得た“視点”

建設パーソンが心身に障害を抱えたとしたら、仕事を続けられるのか。あるいは、障害のある人は、建設パーソンとして建設業の仕事に就けるのだろうか?

人材不足と国籍、性別、性的指向などのダイバーシティ(多様性)が話題の昨今、建設業界において”“障害”はどう扱われているのか、そしてどう対応すべきなのか。ひとりの建築士を訪ねるため、新幹線に乗り込んだ。

私が下半身不随になったわけ

2019年度4月期の連続ドラマ「パーフェクトワールド」(カンテレ・フジテレビ系、火曜午後9時)で、俳優の松阪桃李さんが一級建築士の主人公「鮎川 樹」を演じている。鮎川は事故に遭って脊髄を損傷し、下半身不随の車いす生活を送っている。日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を獲った松阪さんの、リアリティあふれる演技が話題を呼んでいるドラマだ。

「彼はここ(名古屋市北区)にも来てくれて、一緒に食事をしたり車に乗ったりしたんですが、私の動きをとてもよく研究されていました」と語る男性は、「パーフェクトワールド」の原作同名漫画制作にも力を貸した、阿部建設株式会社の代表・阿部一雄さんである。

「身体や足の動きなどは『阿部さんの動きによく似ている』と周りの人にも言われるほどで、びっくりしました」と嬉しそうに彼の演技を評した。

阿部建設の代表・阿部一雄さん

そんな話をしながら、ふと車いすの背もたれを可動し、まるで立つような姿勢に。「すみませんね、同じ姿勢だと褥瘡(じょくそう)ができてしまうので……」。そう、彼は30代で下半身不随になり、以来ずっと、車いす生活だ。

2台ある車いすは、屋内外で使い分けているそう

名古屋の工務店・阿部建設の5代目社長である阿部さんは、小学1年生の頃から家業を継ぐことを意識していた。やがて仕事に携わるようになり、叔父が務める社長の下、最前線に立って仕事を精力的にこなしていた。

30代の中盤になり余裕ができて「若い頃の夢をもう一度」と、趣味として愉しんだオートバイレース。2002年4月、岡山のサーキットで臨んだ引退レースの朝の練習走行で、阿部さんのマシンは転倒した。

本格的なレース用オートバイを駆る阿部さん

「コーナーに入った時、マシンが寝すぎてしまい『これは危ない』と思った。そこから私の記憶はないんですが、観ていた人いわく、マシンごとかなり飛んだそうです」

ふっ飛ばされて気を失った阿部さん。暖かな空気の中、トンネルの向こうでみんなが手を振っているのが見えた。「この人、ぜんぜん目が覚めないんだよね」などという会話が聞こえ、「起きてます、起きてますよ!」と言ったところではっと目が覚めた。それはいわゆる臨死体験だったのかもしれない。

目が覚めたらすぐに気付いたのは背中の熱さ。手が動き、首が回り、そして、足の感覚がまったくない。「覚悟しました。すぐに」。まわりのどの医者に訊ねても、阿部さんが喜ぶような回答は得られなかった――。

岡山の病室で駆けつけた父親と長い時間語らう中、阿部さんはポロッと「車いすの建築士がいても、いいのかな?」と漏らした。父親の答えは「そうだな」。「そう答えてくれて、本当にありがたかった」と阿部さんは語る。そう、この一言が彼の進むべき道を決定づけたのだった。

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「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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