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教育? 労働? それとも搾取? 建築界のインターンシップ「オープンデスク」考

教育? 労働? それとも搾取? 建築界のインターンシップ「オープンデスク」考

イギリスで勃発した「オープンデスク問題」

ここまで聞けば、建築家を志す学生にとってオープンデスク制度はとても有意義だ。しかし、建築設計界隈ではオープンデスクの孕む問題について、毎年のように賛否両論の議論が起こる。

記憶に新しいのは、2019年3月、ヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展で金獅子賞を受賞した建築家・石上純也氏のインターン内容をめぐる騒動だ。

イギリス・ロンドンの小さな美術館「サーペンタイン・ギャラリー」。毎年夏、世界的知名度がある建築家が無償でひと夏だけの仮設パビリオンをデザインする。日本人ではこれまでに伊東豊雄氏、妹島和世氏、藤本壮介氏が抜擢されている。そして石上氏は期待に応え、見事なパビリオンをデザインした(2019年10月6日まで公開中)。

しかし、彼の事務所がサーペンタイン・ギャラリー設計チームのインターン募集をした際に、トラブルが起きた。

彼の提示したインターン条件は、午前11時から深夜までの1日12時間労働で、しかもそれが2~3ヶ月間続くというものであった。それは無給であり、さらに言えば、個人で所有するコンピューターを持ち込んで作業しなければならなかったという。

当然、この過酷な労働条件はイギリスで強く非難された。施主のサーペンタイン側は「無給スタッフを設計に関わらせてはいけない」と通達し、結果的に石上氏はすべての学生に報酬を支払うこととなった。

実は2013年の藤本壮介氏の時にも同じような騒動が巻き起こっている。

しかし、石上氏や藤本氏だけを責めても意味がない。彼らの事務所に限った話ではなく、日本では多くの設計事務所がオープンデスクを採用している「日本の建築界の常識」だからだ。

それは皮肉なことに日本を離れイギリスの世論に触れたことによって、あらためて問題だと認識された(はじめてではない)。「日本の建築界の常識」を世界に知らしめてしまったのは日本の建築界にとってもマイナスなように思うのだが……。

繰り返すが、オープンデスク自体が悪いのではない。石上氏の一件のように「オープンデスクの本来の目的」から外れた運用が問題なのだ。

 
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「建設の匠」編集部
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「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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