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教育? 労働? それとも搾取? 建築界のインターンシップ「オープンデスク」考

教育? 労働? それとも搾取? 建築界のインターンシップ「オープンデスク」考

オープンデスクは労働か?修行か?

そもそも欧米諸国ではインターンを「労働」とみなしている国が多くある。実務に携わらせるがゆえに、長期かつ有給なそれであることが多い。

しかし日本では古来の丁稚奉公的な思想が残っているのか、「修行させてあげる、でも半人前だからタダね」となってしまっているように思う。

Twitterを覗くと、建築家界隈でもさまざまな意見があるようだ。

「オープンデスクというあまりに雇用者側に都合のいい制度は明確に禁止にした方がいい」(豊田啓介氏)

オープンデスク即無償労働やりがい搾取という自動機械的反応は本当に良くない(中略)オープンデスクを駆逐することが建築界に豊かさをもたらすとは思えない」(吉村真基氏)

今後建築家は募集する場合、バイトなのかオープンデスクなのかを完璧に明記して応募するとクリアーだ」(五十嵐淳氏)

「就業体験・業務委託の違いを区別していればオープンデスクそのものは本来よい制度だが、人気のある事務所が『無償でも働きたい人がいるから受け入れているだけ』という態度を取るとか、大学で教員をやっていて学生と接点の多い人が日常的に学生を事務所に動員するとか、区別に無自覚なのは止めるべき」(藤村龍至氏)

有名どころ以外の建築設計事務所主宰がどう考えているのか、気になるところだ。

 

一級建築士を目指す建築学生だが、他の士師業はどうだろう。

インターンはかつて医師の世界でもあった。1946年に導入された「インターン制度」は、医学部卒業後に1年間の実地修練を経なければ医師国家試験を受験できなかった。そのせいで医師のタマゴは無給労働を強いられた。いまからおよそ50年前の学生運動勃発の発端は、この医師インターン制度に反対する学生と大学の対立によるもの。結果として1968年には廃止されたが、これほどまでに「無償労働」は禍根を残すのだ。

大学の必修単位に組み込まれているという例では、教師の「教育実習」もある。教育実習では、早朝から夜まで拘束時間がとにかく長い(しかも帰りづらい空気がある)。教育学生は現場経験を増やすためと称して、単位外の学校支援ボランティアに参加していることが多い。これらが「教師は子どものためにとにかく長い時間働いて当たり前」という労働文化を生む源泉だとして、近年世間の批判の対象となっている。

では、有給インターン(=実質アルバイト)にしたら万事解決するのかというと、「その原資をどう調達するのか。いち個人設計事務所レベルでは学生にそんなに報酬を払えない」なる声も聞こえてくる。

だからといって個人零細事業主なら若者をタダ働きさせていいという理屈は成り立たない。いかに小さな建築設計事務所と言えど、学生を受け入れるならば収益構造の改善や生産性の向上など、さらなる企業努力が必要ではないだろうか。「学生には無給でいい」と考えている「やりがいの搾取」マインドこそ、未来の建築パーソンの芽を摘んでいるのでは、と思えてならない。

オープンデスク制度が開始して早30年。社会状況が変化すると同時に人々の考えや価値観は変容してきた。建築家のタマゴを育てる制度は素晴らしいし、働き方に対する考え方はさまざまあってもいいと思う。多様な価値観のもと、もっと活発な議論が交わされるのは当然と言えよう。

今後、オープンデスクを肯定的に捉えていくのであれば、建築設計事務所と学生の双方が純粋な学びの場を作り上げていくか、あるいは法に基づいてしっかり「労働」とみなしていくべきではないだろうか。

 

オープンデスクについて、編集部では今後も記事にしていく予定だ。(つづく)

 
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「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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