東京タワー・コレクション【60周年の夜景】

1958年12月23日に竣工した東京タワーは、平成最後の天皇誕生日である2018年12月23日に60周年を迎えた。東京タワーのライトアップの歴史を紐解いてみると、スタートは1989年元日。奇しくもその7日後、「平成」はスタートした!
夜の東京タワーを彩るライトアップは、まさに「平成」とともに歩んできたものだったのだ。
2013年5月31日に、地上デジタルテレビ放送の電波送信施設は東京スカイツリーへ切り替わった。2018年9月30日には放送大学が地上波放送から衛星放送に移行し、テレビ電波塔としての機能を停止している。FMラジオの電波送信は引き続き行うものの、一時代の終焉を感じてしまう。
それでも、東京タワーの価値が損なわれることはない。すばらしい建築物の価値は不変なのである。
東京タワーはわずか1年半という超短工期で建設された。「エッフェル塔よりも高い塔を、地震の多い日本で建てる」というミッション遂行のため、“耐震構造の父”“塔博士”といわれた建築構造学者・内藤多仲(ないとう・たちゅう)は3か月で約1万枚の設計図を描いたという。
そして建設に関わったのは、全国から集まった22万人もの各職人たち。彼らは早朝から日が沈むまでフル稼働で働いた。突貫かつ難工事を支えたのは、彼ら“匠”たちの卓越した仕事以外の何物でもない。そのおかげか、2011年の東日本大震災で先端部のアンテナが曲がってしまった(その後補修)ものの、いまに至るまで地震の影響による被害は皆無なのである。
さて、「戦車の鉄を溶かしてつくった」と割と武骨な逸話を持つ東京タワーだが、そのくせどこか華奢なフォルムが夜の闇に浮かぶたび、私たちは胸に去来するさまざまな思いに、なぜか心をゆさぶられてしまう。
思えば『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』『東京タワー』『ALWAYS 三丁目の夕日』などの作品にも東京タワーは象徴的に登場する。それは東京人にとって、たとえ電波塔としての役割を終えても、もはや理屈を超えたシンボリックな存在になっているという証なのではないのだろうか。
これからも、東京に住む人たちの心の拠りどころとして、すっくと建ち続けていてほしいものだ。
- 所在地
- 東京都港区芝公園四丁目2−8
- カテゴリ
- タワー
- 用途
- 通信施設
- 階数
- 地上16階・地下2階
- 敷地面積
- 15,577.143㎡
- 延床面積
- 24,874.87㎡
- 建築面積
- 4,470.34㎡
- 着工年月
- 1957年6月29日
- 竣工年月
- 1958年12月23日
- 発注者(事業主)
- 日本電波塔株式会社(現・株式会社東京タワー)
- 設計者
- 内藤多仲 / 株式会社日建設計
- 施工者
- 株式会社竹中工務店
- 構造
- 鉄骨造および鉄筋コンクリート造
- 構造形式
- トラス構造
- 高さ
- 332.6m

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