静岡新聞・静岡放送東京支社ビル・コレクション【銀座で気になるメタボな樹】

西新宿にアバンギャルドな繭があるなら、銀座にはメタボリズムの樹がある。
静岡新聞・静岡放送東京支社ビルは、1967(昭和42)年竣工のオフィスビルだ。丹下健三が設計した「メタボリズム」の代表的建築として、広くその名を知られている。
パレスサイドビルと同じような円筒形のコア部分が目を惹く。この「コミュニケーション・シャフト」はまるで樹の“幹”のようであり、さらにその幹からにょきにょきと生えている”枝”あるいは“葉”。鉄筋コンクリート造の幹部分(コア)にはエレベーターや階段などが備わり、鉄骨造の枝部分はオフィスだ。基本思想は中銀カプセルタワーと同じもの。メタボリズムならでは、である。
これがシルバーのアルミパネルにでも覆われていれば、いかにも昭和SF的建築に映っただろう。それが、茶色の外装色によって、筆者にはなにがどうやっても“樹”にしか見えない。しかも銀座と新橋の境界近くにあるため、「ここから先は銀座ですよ」と観光客に案内する目印の樹に見えるのだ。むかし、街道をゆく旅人の目印として植えられていた大樹のように。
銀座に植えられたメタボリズムの樹は、その後、銀座の街に広がっていく計画もあったようだけれど、あいにくこの一本だけで終わってしまった。しかしビルの魅力が損なわれることはもちろんなく、いまもオフィスとしてしっかり稼動中である。
このビルの撮影中、一眼レフで同ビルを撮影していた観光客とおぼしき白人女性に「このビルはとても素晴らしいわね」(たぶんこんな感じの英語で)と話しかけられたので、「Yes, Good Building!」と笑顔で返した。ニッポンは令和へと移り変わったけれど、昭和のビルだってこんなに素敵なんですよ、という誇らしさを込めて。いうまでもないが、筆者は昭和生まれである。昭和建築バンザイ!
- 所在地
- 東京都中央区銀座8丁目3−7
- カテゴリ
- 高層ビル
- 用途
- オフィス
- 階数
- 地上12階・地下1階
- 敷地面積
- 187㎡
- 延床面積
- 1,493㎡
- 建築面積
- 162㎡
- 着工年月
- 1966年9月
- 竣工年月
- 1967年10月
- 発注者(事業主)
- 株式会社静岡新聞社
- 設計者
- 丹下都市建築設計
- 構造設計者
- 青木繁研究室
- 設備設計者
- 株式会社森村協同設計事務所
- 施工者
- 大成建設株式会社
- 構造
- 鉄骨鉄筋コンクリート造
- 規模
- 地上12階・地下1階
- 高さ
- 57m

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