国立西洋美術館本館コレクション【国内初採用の技術で守られた世界遺産】

「世界遺産」「近代建築の巨匠、ル・コルビュジエの日本唯一の作品」「松方コレクションの返還先」「前川國男、板倉準三、吉阪隆正らコルビュジエの弟子による設計」……。国立西洋美術館本館を語るにあたり、正直、キーワードが多すぎて困った。
ここはいったん、頭の中を空にして国立西洋美術館本館を見てみたい。
直線のみで構成された、クリーンな外観。目を惹くのは、柱で持ち上げられた「ピロティ」という空間だ。ル・コルビュジエが生み出したこの手法は、国立西洋美術館本館を特徴づける最大のポイントである。
ここで取り上げたいのは、この名建築がいま姿のままこの世に存在するのは、日本ではじめて採用された「免震レトロフィット工法」のおかげだということ。日本初の事例として1996年から1998年にかけて国土交通省が行った工事により(施工は清水建設)、計49台の免震装置が本館地下に設置されたのだ。構造設計面では、すべての構造部材を 3Dモデル化して安全性を確認したのだとか。
阪神大震災の教訓を基に行われたこの工事は、それから13年後に起きた東日本大震災の大きな揺れにもじゅうぶんに効いた。仮に免震装置を使わないとしたら、このピロティの柱間を壁でつながなければならない。それはきっと相当に野暮である。当然、美しさや特徴は大幅に損なわれ、2016年の世界遺産登録もきっと難しかったことだろう。前例のない技術の活用を決めた英断と実現させた匠の技に、心より感服する。
建物自体が実存しなければ、わたしたちは名建築について語らうことさえむずかしい。その意味で、名建築を護る技術の価値はきわめて高い。国立西洋美術館本館は、それを再認識させてくれる好例なのである。
【2020年1月27日追記】
この国立西洋美術館において2020年3月3日〜6月14日、「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」が開催される。ロンドン・ナショナル・ギャラリーが誇るフィルメールやゴッホなどの傑作絵画61点がはじめて海を渡り、東京・上野にやってくるのだ(すべて日本初公開作品)。
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- 所在地
- 東京都台東区上野公園7番7号
- 用途
- 文化・研究施設
- 階数
- 地上3階、地下1階、塔屋1階
- 文化財指定日
- 2007年
- 敷地面積
- 9,287㎡
- 延床面積
- 4,399㎡
- 建築面積
- 1,587㎡
- 着工年月
- 1958年3月
- 竣工年月
- 1959年5月
- 設計者
- 基本設計:ル・コルビュジェ 実施設計:前川國男 / 坂倉準三 / 吉阪隆正
- 施工者
- 清水建設株式会社
- 管理運営
- 独立行政法人国立美術館
- 構造
- 鉄筋コンクリート造

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