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萩原雅紀の「ダム」道。【01】私はこうしてダムにはまりました

萩原雅紀の「ダム」道。【01】私はこうしてダムにはまりました

ダムに目覚めた

初めてダムを真下から見上げて、ダムというものの圧倒的な巨大さ、底知れぬ迫力にすっかり打ちのめされた。震える足で遊歩道を車まで戻りながら、それでも心は高揚して、ダムってすごい、ほかのダムも見たい、と強く思った。自分の新しい扉を開けた手応えがあった。
しかし、その時点ではまさか自分であちこち見に行こうとまでは考えていなかった。というのも、当時はちょうどインターネットが一般家庭に普及しはじめた頃。テレビや雑誌では取り上げられないようなマニアックな題材の個人ホームページが発生していて、特に、川にある水門の写真ばかり撮っている人や、街中に忽然と現れるガスタンクをめぐっている人のホームページが好きでよく見ていたので、自分の中では水門やガスタンクよりメジャーな存在なダムも、既に誰かが取り上げていると思っていたのだ。

しかし、ダムで検索しても湖の写真やガンダムが出てくるばかりで、水をせき止める本体の部分にクローズアップしたホームページは見つけられなかった。

「ダムに行ってきました」というタイトルで写真がこんな。「そっちじゃないんだよ!」と何度画面に突っ込んだことか

「仕方なく」始めてみた

それで、仕方ないのでとりあえず自分で行ってみることにした。ネット上には情報がほとんどなかったので、仕方なく地図を見て「ダム」と書かれた水色の水たまりを目指した。カメラも持っていなかったので、仕方なくヤフオクで中古のデジカメを5,000円くらいで手に入れた。

そうして、まずは関東近郊のダムに片っ端から出かけて行った。ところが、最初に目をつけたダムは釣り人か何かの情報だったのだけど、いわゆる貯水ダムではなく小さな砂防ダム。その後も、行ってみると高さの低いいわゆる堰だったり、まだ工事すら始まっていなかったり(結局その後中止になった)、もちろん完成しているダムもあったけれど、当初はまとまった最新の情報がなく、ダムめぐりは苦労した。

その後「ダム年鑑」というダムのスペックや位置などの情報を集めた電話帳のような本の存在も知った。しかし「ダム年鑑」は定価20,000円、とても個人では買えなかったので、仕方なく発行元である「日本ダム協会」に中古を安く譲ってもらえないか、と問い合わせたものの中古はない、との返答。仕方ないので蔵書がある広尾の都立図書館に出向いた。「ダム年鑑」は貸し出し不可だったため、仕方なく受験生たちに紛れて中身をひたすらノートに書き写す、という作業をしばらくの間続けたため、正確な情報が手に入るようになった。

思えば、最初はさまざまな「仕方なく」が重なって始めたダムめぐりだった。しかし、見てまわるうちにいろいろ発見があり、誰もやっていない楽しいことを見つけた、という高揚感もあり、気がつけば夢中になって各地に足を伸ばしていた。

「アーチダム」や「ロックフィルダム」を初めて見たときは感動した

情報がある程度溜まったところで、写真やデータ、探訪記でまとめたダムのホームページを作成したところ、多くの方から「実は私もダムが好きだった」というようなカミングアウトの反応をいただくようになり、ネット上やサブカル系の雑誌の片隅で紹介されたりするようになった。

その後はこの文章の前半の部分に繋がり、ダムの魅力や役割を多くの人に知ってもらうための活動を続けている。そして、ダムのトレーディングカードであるダムカードや、ご飯をダム本体、ルウを貯水池に見立てたダムカレーの登場などもあって、ダム界隈は右肩上がりで盛り上がってきている。ダム鑑賞も趣味のひとつとしてかなり認知されてきたのではないか。

「ダムが好き」と胸を張って言える時代になりつつあるいま、まだの人はぜひ近くのダムに出かけてみてください。

 
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WRITER
萩原 雅紀
萩原 雅紀
ダムライター、ダム写真家。1974年東京生まれ。ダムと名のつくものすべてを対象に、ライフワークとして「ダムめぐり」を続けている。これまで訪れたダムは国内外合わせて500基以上。毎年末に「日本ダムアワード」を主宰。ダムカードの発案にも携わる。著書に『ダム』『ダム2』(メディアファクトリー)、『ダムに行こう!』(学研プラス)等。
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