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萩原雅紀の「ダム」道。【04】バージョンアップで復活!不死鳥のダムたち

萩原雅紀の「ダム」道。【04】バージョンアップで復活!不死鳥のダムたち

土砂の堆積をブロック!

ふたつ目はダムに貯まる土砂をどうするかという話。ダムに押し寄せるのは水だけでなく、水と一緒に上流から流れてくる土砂も、ダムを悩ませる宿敵のひとつなのだ。

土砂が溜まりすぎるとダムとしての機能がなくなってしまう

原則的に、ダムを設計するときには100年で貯まる土砂の量を予測し、それを含めた上で必要な貯水量が確保できるように堤体の大きさを決める。しかし、相手はやっぱり自然。想定外の大雨が降ったり、上流で大規模な土砂崩れが起こったりすると、予測よりも早いペースで貯水池に土砂が堆積していくこともある。そうすると貯水量が減り、つまり洪水調節容量や用水の確保量が減ってしまう。そこで最近は、各地のダムで貯水池に土砂を貯めないようにする改良が行われているのだ。

長野県の天竜川流域に設置されている美和ダム、小渋ダムはどちらも中央構造線とフォッサマグナの交点に近く、脆い地質の影響で完成直後から想定以上の土砂の堆積に見舞われていた。美和ダムは100年で貯まると予測された土砂の量の2倍に達して貯水量が減少。小渋ダムはこのまま土砂の堆積が続けば、通常の洪水調節などで使用する放流ゲートが埋まる恐れがあった。

天竜川を守る多目的ダムコンビ。左:美和ダム、右:小渋ダム

そこで両ダムは貯水池の上流端に小さな堰を設け、そこからダムを迂回して下流に繋がるトンネルを建設。大雨で流量が多いときは、上流から流れてきた土砂を含んだ水を貯水池に入れず、洪水調節に影響のない範囲でトンネル経由で下流に流してしまうのだ。これは「土砂バイパストンネル」と呼ばれ、もちろん下流に流せる量以上の分は貯水池に貯めるのだけど、ダムなのに貯水池に水を入れず直接下流に流す、というのは一瞬アイデンティティを否定しているようでびっくりする。

美和ダム貯水池の上流端に造られた分派堰。ふだんは堰を越えて左の貯水池の方に流れ込み、流入量が増えると右側の水門が開いてトンネルの方に水が送られる

上の写真の反対側。水門を通った土砂を含んだ水はトンネルに入って行き、ダムを迂回して下流へ

美和ダムのすぐ下流にあるトンネルの出口。こうして土砂を含んだ水はダム湖に入らず直接下流に流される

いっぽう、宮崎県の耳川に設置された九州電力の発電ダム群も、堆積する土砂に悩まされていた。2005年の台風14号による豪雨では、放流ゲートに引っかかった流木や、貯水池に堆積した土砂によってダム上流側の水位が異常に上昇、貯水池沿いに立ち並ぶ住宅や商店の大半が浸水する被害が出た。

そこで、山須原ダム、西郷ダムではダムの上に並んだ放流ゲートの一部を撤去して堤体を切り下げ、そこに巨大なゲートを設置するという大改造を行っている。

巨大なゲートを設置工事中の山須原ダム

工事前の山須原ダム(2004年撮影)。もうこの面影はまったくない

2004年頃の西郷ダム。アーチ模様がかわいい

改造工事が終わった西郷ダム。ガラリと姿は変わったがアーチ模様が受け継がれているのが嬉しい

大雨で流量が増えたときに、巨大なゲートを開けて貯水をすべて放流、通常の川と同じ状態にすることで底に貯まった土砂を流してしまうのだ。これだけ聞くとかなり荒技な印象だけど、洪水調節などの目的がない、貯水量もそれほど多くない発電専用ダムだからこそできる効率的な方法だと思う。

新規にダムが造られることが少なくなってきたこれからは、いまあるダムをいかに有効に長く使えるかがポイントになってくる。ダムの堆砂対策は、今後のダム再開発の中心になってくるのではないかと思う。

 
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WRITER
萩原 雅紀
萩原 雅紀
ダムライター、ダム写真家。1974年東京生まれ。ダムと名のつくものすべてを対象に、ライフワークとして「ダムめぐり」を続けている。これまで訪れたダムは国内外合わせて500基以上。毎年末に「日本ダムアワード」を主宰。ダムカードの発案にも携わる。著書に『ダム』『ダム2』(メディアファクトリー)、『ダムに行こう!』(学研プラス)等。
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