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萩原雅紀の「ダム」道。【05】重力式ダムだってダイバーシティ

萩原雅紀の「ダム」道。【05】重力式ダムだってダイバーシティ

もっと水位を上げたかったら

基本のダムが出来上がったけれど、どんなものでも使っていくうちにいろいろ要望が出てくるものだ。

たとえば水力発電は落差が大きい方が出力も大きくなるので、発電用ダムは少しでも水位を高く保ちたい。上水道やかんがい用水も、水不足に備えて1滴でも多く貯めておきたい。しかし洪水吐が自然越流式だと、洪水吐の下端を超えた分は放流されてしまう。ふだんはもっと水位を高く保って、大雨のときだけ放流できるようにしたい。また、治水の目的のあるダムでは、洪水調節のときに下流に流す水の量を最低限に抑え、堤体の設計限界ギリギリまで水を貯められるような運用をしたい。

というような、貯水池の水位や放流量を細かくコントロールするのに最適なソリューションがゲート、つまり水門の設置である。

「クレスト部の洪水吐にゲートを設置しました」

もちろん、自然越流式と同じように、流量が大きい川で洪水吐の数が増えれば水門の数も増えていく。

「クレストゲートは4門に限るな、3門じゃ少ないし5門じゃ多すぎるし」

「え、クレストゲートは多い方がかっこいいって聞きましたけど」

ちなみに、クレストゲートにも種類があって、これまでの写真で出てきたのはラジアルゲートという。扇型をした水門が扇の支点を中心に回転するように開閉する方式で、もうひとつの勢力であるローラーゲートに比べて水圧に強く、開閉機構を目立たず設置できるのだ。

「やっぱゲートつけるならラジアルだよねー」

しかしワッフルのような板が上下に動いて開閉するローラーゲートも、数多くのダムに採用されている。こちらはゲートを上に引き上げるための柱が堤体の上に飛び出しているのが特徴。その分ラジアルゲートと比べて上下流方向の厚みは薄くできる。

クレストゲートをラジアルゲートにするかローラーゲートにするか、設計時にどういう基準で決めるのだろう。そしてシェアではどちらが優勢なのだろう。

「ローラーゲート3門、という完璧なバランス感が君たちに分かるかね」

「いや、ローラーゲートも多い方がかっこいいのだよ」

「先輩その程度で多いとか片腹痛いんですけど」

でも、いままでダムを見てまわってきた経験上、ある程度高さがある重力式ダムでクレスト部にゲートがたくさん並んでいるような場合は、たいていラジアルゲートである。ローラーゲートは多くて6門くらいだけど、ラジアルゲートは20門くらい並んでいるダムもある。この違い、どんな理由があるのだろうか。柱を立てるコストか、もしかしたら耐震性かな?

「ローラーゲートの方が背が高く見えてスマートな姿だよね」

ではここから、クレスト部にゲートがついたダムをさらに枝分かれさせていこう。

 
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WRITER
萩原 雅紀
萩原 雅紀
ダムライター、ダム写真家。1974年東京生まれ。ダムと名のつくものすべてを対象に、ライフワークとして「ダムめぐり」を続けている。これまで訪れたダムは国内外合わせて500基以上。毎年末に「日本ダムアワード」を主宰。ダムカードの発案にも携わる。著書に『ダム』『ダム2』(メディアファクトリー)、『ダムに行こう!』(学研プラス)等。
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