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萩原雅紀の「ダム」道。【07】GWはダム界の“細マッチョイケメン” アーチダムに会いに行こう

萩原雅紀の「ダム」道。【07】GWはダム界の“細マッチョイケメン” アーチダムに会いに行こう

メイド・イン・ジャパン・アースダムの鳴子ダム

黒部ダムが着工した2年後、東北地方で巨大なダムが7年の歳月をかけて完成した。上椎葉ダムと三成ダムに次いで、国内で3番目に着工したアーチダム、鳴子ダムである。それまでの2基は外国から技術者を招聘して建設されたが、鳴子ダムははじめて日本人の手だけで造られた。堤高94.5メートルは5年後に完成する黒部ダムの約半分とは言え、当時国内ではようやく堤高100メートルを超えた頃である。日本のダム史におけるひとつのマイルストーン的な堤体だと言える。

はじめて日本人がすべてを手がけたアーチダム

全体的に滑らかで有機的な曲線が非常に美しい堤体は、堤頂部に自然越流式の洪水吐が並び、毎年ゴールデンウィークに満水になるように水位がコントロールされて、連休中は美しく水が流れ落ちる「すだれ放流」が行われている。

これほどまでに風雅な放流があっただろうか、という美しさのすだれ放流

アーチダムは後年になるにしたがって、水圧を両岸だけでなく下の岩盤にも伝えるために、左右方向だけでなく上下方向にもアーチさせたドーム型アーチダムに進化し、前傾姿勢が増していく。しかし鳴子ダムは上流側が鉛直で下流側の下部がふっくらと厚みを増す、しっとりとした立ち姿で重力式アーチダムに近いシルエット。国内では鳴子ダム以降ドーム型の建設が本格化したため、ほぼワンアンドオンリーの存在感を放っている。デザインもシンプルで、雰囲気としては逆に海外のダムのような印象を受ける。

この雰囲気を持っているダムは国内でここだけ

おすすめ時期はもちろん、すだれ放流が行われるゴールデンウィークだけど、それ以外の時期でも純国産アーチ式堤体の美しさを存分に味わうことができる。また、秋の紅葉も見事だ。

吊り橋からの眺めは圧倒的感動! 川俣ダム

関東地方にもオススメのアーチダムはいくつかあって、これまでにもこういった記事でいろいろ紹介してきたけれど、今回は栃木県の鬼怒川上流に設置された川俣ダムを推したい。

黒部ダムより1年あとの1957年に、当時黒部ダムに次ぐ高さのアーチダムとしてプロジェクトがスタートした川俣ダムは、堤高117メートル、堤頂長131メートルという非常にスマートな堤体。アーチダムの堤頂長は天端の円弧の長さなので、左右岸の直線距離は131メートルよりも短い、つまり下流側から見ると堤体のシルエットはきわめて1:1に近い。建設地点は非常に急峻なV字谷で、ただでさえ幅の狭い谷を塞ぐアーチ式の堤体は、気のせいかもしれないけれど同じ形式のほかの堤体に比べて半径が小さく感じる。

堤高の割に幅が狭くアーチの半径が小さく感じる

そんな縦長堤体を眺めるのに絶好な位置と言える、堤体の下流およそ100メートルの位置に吊り橋が架かっている。渡った先は行き止まりで、ほとんどダムと峡谷を眺めるためだけに架けられたと思われる吊り橋に行くには、片道20分ほど山道を登ったり降りたりしなければならないけれど、堤高120メートル近いダムを下流側から天端とほとんど同じ高さで眺められる――なんて光景は非現実的で、道は険しいけれど、がんばってたどり着こう。

非常にスマートな堤体を吊り橋の上から眺める

川俣ダムのほか、鬼怒川上流には関東地方最大のアーチダムである川治ダム、そのほかに重力式ダムの五十里ダムと湯西川ダムなどもある一大ダム銀座となっている。4ダムはイベントを行うことも多く、特に川俣ダム、川治ダムでは巨大アーチ式コンクリートダムだけの特権である、キャットウォークを歩ける場合もある。ぜひイベントをチェックして足を延ばしてみてほしい。

イベントに参加すればこんな光景も見られるかも!

 
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WRITER
萩原 雅紀
萩原 雅紀
ダムライター、ダム写真家。1974年東京生まれ。ダムと名のつくものすべてを対象に、ライフワークとして「ダムめぐり」を続けている。これまで訪れたダムは国内外合わせて500基以上。毎年末に「日本ダムアワード」を主宰。ダムカードの発案にも携わる。著書に『ダム』『ダム2』(メディアファクトリー)、『ダムに行こう!』(学研プラス)等。
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