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萩原雅紀の「ダム」道。【07】GWはダム界の“細マッチョイケメン” アーチダムに会いに行こう

萩原雅紀の「ダム」道。【07】GWはダム界の“細マッチョイケメン” アーチダムに会いに行こう

梓川3連星のジェットアーチダムアタックだ!

上で紹介した九州電力の上椎葉ダム、関西電力の黒部ダムのように、電力会社のエース級ダムはアーチダムであることも多い。上記以外でも中部電力の高根第一ダムは堤高130メートルで一ツ瀬ダムとほぼ同じ、中国電力は重力式アーチで堤高103メートルの新成羽川ダム、四国電力も堤高62.5メートルの小見野々ダムを管理している。そして、東京電力は長野県の梓川に稲核、水殿、奈川渡という3基のアーチダムを連続して設置している。なかでも奈川渡ダムは堤高155メートルとアーチ式で国内3位の高さを誇る巨大ダムだ。

上高地の入口にそびえ立つ超巨大アーチダム、奈川渡ダム

もちろんこのエリアまで来たら3連アーチダムをすべて見てほしいけれど、ここでは真ん中に位置する水殿ダムを推したい。水殿ダムは梓川沿いを走る国道から少し逸れた場所にあり、上高地に向かう車が大渋滞していてもひとけは少なく、いつでも空いている広い駐車場もある。そして堤高95.5メートルに対して堤頂長343.3メートルという幅広の堤体は雄大で、ゆるやかなアーチが谷あいを塞いでいる光景を好きなだけじっくり眺めることができる。

高さは奈川渡ほどではないが優雅さを持ち合わせている水殿ダム

松本市方面から進んでくるととつぜん正面に現れる最下流の稲核ダム、最上流に位置する超巨大アーチの奈川渡ダムといった派手な堤体に挟まれ、国道から直接見えないため存在感はやや薄い。しかし決して小さくないし、洪水吐が堤体に直接設置されていないため非常にシンプルで美しい。「眼鏡を外して三つ編みを解いたら実は美人だった委員長」といった発見がある。いや待て何の委員長だ。

国道から降りていく道が少し分かりづらいけど探してください

堤頂長日本一の池原ダムを知っているか?

最後に紹介するのは山深い紀伊半島の南部、下北山村に設置されている池原ダムだ。電源開発が建設、管理している発電用ダムで、アーチダムとしては総貯水容量が国内最大の約3億4千万立方メートル。堤高111メートル、堤頂長460メートルというスペックはアーチダムとしてかなり巨大で、特に堤頂長は日本最大の黒部ダムからウイングを除いたアーチ部分よりもおよそ100メートルも長い。

円弧が長くてものすごい存在感

正直に言って、このダムを見るまでは堤高ばかり追いかけて堤頂長という要素をあまり重要視していなかったので、池原ダムのすごさに気づいていなかった。しかし目の前に現れた堤体は有無を言わさない迫力で、長スパンのアーチが広い谷あいに力強くそびえ立っていた。その衝撃を受けて以降、堤高だけでなくいろいろなスペックに注目するようになった。アーチ式に限れば、堤高が黒部ダムなら堤頂長は池原ダムが日本一なのだ。

こういう造形ひとつがまたかっこいい

放流設備は、貯水池を挟んで向かい側の尾根に、巨大なゲートが立ち並んだ立派なものが設置されている。ここは日本有数の多雨地帯で、毎年のように下流の新宮川は洪水の被害を受けている。そこで近年は、大雨が見込まれるときは池原ダムなど新宮川水系の発電ダムで事前に放流を行い、貯水池の水位を大きく下げておいて流入量が増えたらなるべく貯める、という事実上の洪水調節のような運用を行っている。これが絶大な効果を発揮し、下流の洪水被害は大幅に削減されたという。

専門外の運用を行っても、もともと持っているポテンシャルの高さで大きな成果を上げる巨大ダム。これを「かっこいい」と呼ばずして何と呼べばいいのか。道のりは遠いけれど、ぜひそんなイケメンダムに会いに行ってほしい。

そして、せっかくここまで行くなら、池原ダムの上流に設置された同じ電源開発の相棒、堤高103メートルのアーチダムである坂本ダムにも足を延ばそう。黒部ダムをやや小さくした、巨大だけどどこかかわいらしい堤体が出迎えてくれるはずだ。

黒部ダムを見てから行くのと見ずに行くのとで印象が変わりそう

 
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WRITER
萩原 雅紀
萩原 雅紀
ダムライター、ダム写真家。1974年東京生まれ。ダムと名のつくものすべてを対象に、ライフワークとして「ダムめぐり」を続けている。これまで訪れたダムは国内外合わせて500基以上。毎年末に「日本ダムアワード」を主宰。ダムカードの発案にも携わる。著書に『ダム』『ダム2』(メディアファクトリー)、『ダムに行こう!』(学研プラス)等。
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