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萩原雅紀の「ダム」道。【08特別版】平成を振り返るダム界10大ニュース!【前編】

萩原雅紀の「ダム」道。【08特別版】平成を振り返るダム界10大ニュース!【前編】

無事に改元が行われ、令和が始まりました。おめでとうございます。

もう忘れかけていると思うけれど、30年続いた平成が終わりに近づいた頃、いろいろな業界で平成を振り返る記事が出回っていた。ではダム業界にとって平成はどんな時代だったのか。最後まで待ったけれど誰もやらなかったので、振り返っておきたいと思った。完全にタイミングを逃した感があるけれど。

そこで、知り合いのダムの専門家とダム好きに平成時代の印象的な出来事を聞いてまわり、最終的に僕の独断と偏見で「平成ダム界10大ニュース」をまとめてみた。あくまでも「10大」なので特にランキングはしていない。また、専門家だけでなく一般ファンの目線も入っているのと、まとめたのがダム好きなので、専門家の方々の印象とは違うかも知れないし、逆にライトなダム好きからするとピンと来ないところもあるかも知れない。そのへんはご了承ください。

昭和から平成のダム界を振り返る

とりあえず平成で最初に竣工したダムはどこだろう、といろいろ調べたけれど時間不足で特定まではできなかった。大きいところで言うと、青森県の浅瀬石川ダムが昭和63年、北海道札幌市の定山渓ダムが平成元年に竣工している。そして群馬県の奈良俣ダムが平成2年竣工。

昭和の末に完成した浅瀬石川ダム

平成で最初に完成した巨大ダム、定山渓ダム

このあたりのダムを見ると、何というか高度経済成長期の無骨な堤体(それはそれでかっこいい)などと比べて、各所に見た目を意識したデザインが取り入れられ、新しい時代の幕開けを感じられると思う。しかし今から振り返ると、デザインの進化に関してはまだ入口だった。

高度経済成長期のダムの例。昭和42年完成の金山ダム(北海道)

10大ニュース1・新工法の確立、新型式の登場、アーチ式の終了

10大とか言っておきながら、のっけから見出しに3つも項目を入れてしまった。この記事終わるのだろうか。とりあえずダムの型式や工法など、建設にまつわる平成トピックスだと思ってください。

平成2年、秋田県の雄物川水系玉川に完成した玉川ダムは、堤高100m級の巨大ダムとしては初めて「RCD工法」で建設された。RCD工法とは、日本で開発されたコンクリートダム建設における工法のひとつで、セメントの量を減らした超硬練りのコンクリートをブルドーザーで敷き均し、振動ローラーで締め固める方法。それまでの柱状工法やブロック工法などと比較して、工期の短縮やコスト削減などに優れている、と言われている。もちろん、実際に工事を監督したことがないので実感はない。

RCD工法で建設された初の100m級ダム、玉川ダム

昭和56年に竣工した島地川ダムで世界で初めて採用されたRCD工法は、それまでとは規模の違う玉川ダムの建設が無事に終了したことで、超巨大ダムでも対応できる技術として確立。その証として玉川ダムの天端から見下ろすと、眼下に巨大な「RCD」と形取られた植え込みが見える。そして宮ヶ瀬ダムなど、その後の巨大重力式コンクリートダムの大部分でRCD工法が採用された。ちなみに平成末期には、効率や速度をさらに進化させた「巡航RCD工法」が開発され、八ッ場ダムなど最新のダムで採用されている。

玉川ダム天端から見える「RCD」の植え込み

巡航RCD工法で建設が進められている八ッ場ダム

また、平成24年に北海道に完成した当別ダム、翌年に沖縄に完成した金武ダムは、日本生まれの新型式である「台形CSGダム」で建設された。

CSGとは「Cemented Sand and Gravel」の略で、砂礫に水とセメントを加えたもの。コンクリートと似ているけれど、ダム用コンクリートは骨材の品質や大きさを厳密に揃える必要があるけれど、CSGは川床や原石山から出てきた砂礫をほぼそのまま使用することで選定の手間を省き、コストを抑えている。堤体の形はロックフィルダムのように上流面下流面ともになだらかな斜面で、コンクリートダムとフィルダムのハイブリッドのような型式。つまり「コンクリートダム」、「フィルダム」の2極以外の型式が生まれたということで、ダム技術業界ではかなりの大ニュースなのではないかと思う。

まったく新しい型式が生まれたいっぽう、平成21年に熊本県の川辺川ダム計画が中止された結果、平成13年に相次いで完成した温井ダム、奥三面ダムをもって、日本のダム建設計画からアーチ式コンクリートダムが姿を消した。昭和28年に島根県に三成ダムが造られて以降、全国におよそ50基建設されたアーチダムは、とりあえず新規に計画されない限り、今後国内で造られることはない。

日本のアーチダム建設技術のすべてが投入された最後のアーチアムのひとつ、温井ダム

ちなみに現在もっともアーチダム建設が盛んなのは恐らく中国で、大きいものでは堤高300mに迫るような堤体が次々に造られ、世界の巨大ダムの勢力図をものすごい勢いで塗り替えている。

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WRITER
萩原 雅紀
萩原 雅紀
ダムライター、ダム写真家。1974年東京生まれ。ダムと名のつくものすべてを対象に、ライフワークとして「ダムめぐり」を続けている。これまで訪れたダムは国内外合わせて500基以上。毎年末に「日本ダムアワード」を主宰。ダムカードの発案にも携わる。著書に『ダム』『ダム2』(メディアファクトリー)、『ダムに行こう!』(学研プラス)等。
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