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ダムライター・萩原雅紀の「ダム」道。【09】打設完了!重力式コンクリートダム「八ッ場ダム」のつくりかた

ダムライター・萩原雅紀の「ダム」道。【09】打設完了!重力式コンクリートダム「八ッ場ダム」のつくりかた

これまで、当連載でダムの魅力や役割や放流などについて語ってきたけれど、そう言えば「建設の匠」なのにダムの建設について触れていなかった。そこで今回は、ちょうど良いモデルとして、建設工事開始当初から何度か取材している八ッ場ダムを例に、ダムはいったいどうやって造られるのかを解説しながら、最終盤に差しかかった八ッ場ダムの建設工事を振り返りたい。

八ッ場ダムとは

八ッ場ダムは群馬県の吾妻川に建設されている、堤高116m、堤頂長291mの重力式コンクリートダム。1947年(昭和22年)に関東地方を襲い、利根川を決壊させ埼玉県から東京都東部までを水没させるという未曾有の洪水被害を出したカスリーン台風を契機に計画された、首都圏を洪水から守る利根川上流の9か所のダムのうちのひとつだ。計画はその後、人口の増加に合わせて治水だけでなく生活用水の確保なども織り込んで修正され、現在は7か所のダムとひとつの遊水地が完成、残るダム建設は八ッ場ダムのみの状態だった。

利根川水系最大の矢木沢ダムもこの計画によるもの

ダムを造る前の準備

ダムを造るにあたって、計画を発表したらまず取りかからなければならない(そしてもっとも難しく時間が必要な)のは水没予定地に住む人々の移転交渉と土地の買収などだけど、このあたりは当事者以外よく分からないので、ここでは交渉を重ねた末、なんとか話がまとまって無事に着工にこぎつけられたことにする。

ちなみに移転しなければならないのは住民だけでなく、学校や役所などの公共施設、道路や鉄道、水道や下水道や電力などのインフラ設備など、街を構成するものすべてである。だからダム建設の前に新しい居住地の造成、道路や鉄道の引き直し、そのためのトンネルや橋梁の建設などもあり、ほとんどすべての土木建設工事が発生する。

道路も線路も電線もすべて移設しなければならない

新しく架けられた橋の下に電気や水道が通してある

廃止された川原湯温泉駅と背後に新しく架けられた橋

高台に移設された川原湯温泉駅

八ッ場ダムの場合、さらに温泉地が水没することになったため、新たな源泉の掘削、温泉街の移転なども必要だった。

ダムを造るはじめの一歩

さて、無事に水没地域の移転が行われたらいよいよ本体工事である。しかし、その前にもうひとつやっておかなければならないことがある。焦らして申し訳ない。

ダムの本体(堤体という)を造る場所に水が流れていると工事ができないため、現場を迂回させる水路を造るのだ。たいていの場合、少し上流から下流まで現場をバイパスさせるトンネルを掘ることが多く、これを仮排水トンネルと言う。

分かりにくいけれど仮排水トンネルの入口

バイパスした水が出てくるトンネル出口

仮排水トンネルと建設現場の間には、上流側下流側とも、もし大雨で増水しても現場に水が流れてこないように、上流仮締切や下流仮締切と呼ばれる小さなダムが造られる。

建設工事現場の上流に造られた上流仮締切

下流側に造られた下流仮締切

また、川幅が広かったり普段から水量が多かったり、条件的にトンネルを掘ることができない場合は川を半分に仕切って片側ずつ建設していくこともある。

こうして、堤体を造る場所を川の流れから切り離したら、ようやく本体の着工だ。

堤体建設地点の谷底から上流仮締切を見る

下流側から見た堤体建設地点。次に来たときに景色が変わりすぎて腰を抜かす

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WRITER
萩原 雅紀
萩原 雅紀
ダムライター、ダム写真家。1974年東京生まれ。ダムと名のつくものすべてを対象に、ライフワークとして「ダムめぐり」を続けている。これまで訪れたダムは国内外合わせて500基以上。毎年末に「日本ダムアワード」を主宰。ダムカードの発案にも携わる。著書に『ダム』『ダム2』(メディアファクトリー)、『ダムに行こう!』(学研プラス)等。
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