萩原雅紀の「ダム」道。【09】打設完了!重力式コンクリートダム「八ッ場ダム」のつくりかた

いよいよコンクリート打設の開始
仮排水トンネルや基礎掘削の作業と同時に、堤体予定地の周辺ではコンクリート製造のプラントや運搬のためのクレーンなどが建設される。コンクリートに必要なのはセメントと水、そして砂や石などの骨材だ。ダム建設において、この骨材は基本的に現地調達が一般的。周辺の土地を調査して、骨材として相応しい硬さの石が必要量採れる場所(原石山という)を見つけておくのだ。
八ッ場ダムでは、原石山が堤体から直線距離で2km以上離れた山の向こう側だった。
そこで現場近くまでトンネルを掘り、原石山近くに作られた骨材選別、貯蔵のプラントから堤体工事現場近くに作られた貯蔵ビンまでベルトコンベアーが敷かれて運ばれた。ちなみにトンネルを抜けたベルトコンベアーは、大部分が高い部分に付け替えられた吾妻線の旧路盤の上を通された。

最初に見た骨材製造プラント予定地

8ヶ月後、骨材プラントの建設が始まり…

1年3ヶ月後には立派なプラントが稼働していた

八ッ場ダムの原石山。足元の石もこのあと骨材として使われたはず

骨材運搬のために掘られたトンネル。この時点ではまだベルトコンベアーは稼働していない

線路や駅舎も撤去された旧川原湯温泉駅

その後、ベルトコンベアーが通った旧川原湯温泉駅

線路跡の上を骨材運搬のベルトコンベアーが通る
堤体工事現場のすぐ脇にはコンクリート製造プラントが造られ、使用するコンクリートを素早く製造、谷間を大きく跨ぐように張られたケーブルクレーンで行き来するバケットに積み込まれ、打設現場に運ばれる。

コンクリート製造プラントとケーブルクレーンとバケット
ちなみに八ッ場ダムなど、近年の重力式コンクリートダムはほとんどがRCD工法で造られている。RCD工法はスランプ0という、非常に硬練りのコンクリートを敷き均し、振動ローラーで締め固める。そのため、バケットから降ろされたコンクリートはまずグランドホッパーで受け止め、そこからダンプトラックに乗せ替えられて打設現場まで運ばれていた。

バケットからグランドホッパーを経由してダンプにコンクリートを積み

ダンプが打設箇所でコンクリートを下ろし、ブルドーザーが敷き均す

振動ローラーで締め固める

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