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萩原雅紀の「ダム」道。【19】ダムはいかにして大雨洪水と戦っているのか
2020/09/16
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筆者:萩原 雅紀
目次
今年もまた、大雨が降って痛ましい水害が発生してしまった。
地球温暖化の影響で雨の降りかたが変わってきたなどとも言われているけれど、そもそもの条件として、急峻な地形で雨が多く、小さな平地に多くの人が暮らしているこの島国は、水害が発生しやすいと言えるだろう。
そして、洪水被害が起こるたびに問われるのがダムの運用である。
操作は適切だったか、こうすれば被害を防げたのではないか、大雨の最中なのに放流していた、緊急放流のせいで洪水が発生した、前もって空にしておけば被害は防げた、水害を防げないなら必要ない……などなど、ふだんはダムに見向きもしていない人たちが毎度毎度同じような議論を繰り返す。
もう、うんざりである。
たしかにダムの運用は分かりにくい。いまどういったことが行われているかという情報は、その流域の人々にはともかく、それ以外の地域の人が直接知る術はほとんどない(流域外の人が知る必要はない、とも言える)。だけど、少しでも多くの人がダムの動きを読み取ることができるようになれば川の状況が分かるし、状況を見て適切な行動や議論が行われるようになるだろう。なってほしい。

洪水時ではないが例えばこの放流がなぜ、どんな目的で行われているか説明できるだろうか
だから今回は、大雨のとき、洪水を抑えるためにダムがどんな戦いをしているか、いちから解説していこうと思う。難しいけれど大丈夫、野球やサッカー、ラグビーだって、なんとなく見ているうちに、インフィールドフライやオフサイドやジャッカルなどといった難解なルールを、多くの人が分かるようになったじゃないですか。
調べれば調べるほどいろいろな状況が出てきて、たしかにダムの運用を理解するのは簡単ではない。でも人の命や財産がかかっているのだ。知って損にはならないはずだ。
WRITER

萩原 雅紀
ダムライター、ダム写真家。1974年東京生まれ。ダムと名のつくものすべてを対象に、ライフワークとして「ダムめぐり」を続けている。これまで訪れたダムは国内外合わせて500基以上。毎年末に「日本ダムアワード」を主宰。ダムカードの発案にも携わる。著書に『ダム』『ダム2』(メディアファクトリー)、『ダムに行こう!』(学研プラス)等。