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萩原雅紀の「ダム」道。【20】いまこそ盛り上がれ!ロックフィルダム・イン・ジャパン・フェス2020

萩原雅紀の「ダム」道。【20】いまこそ盛り上がれ!ロックフィルダム・イン・ジャパン・フェス2020

ロックフィルダムは「カンジキ」?

ここまで読んで、なぜコンクリートダムではなくロックフィルダムが造られるのか、という疑問を持った方もいるかも知れない。これは重力式やアーチ式を含めて、すべてのダムの型式が存在する理由でもあるのだけど、堤体が作られる場所の地質や地形と建設コストの関係によるものだ。

単純に材料のコストだけで考えれば、コンクリートの使用量が少ないアーチ式がもっともコスパが良いはずだ。しかし、アーチ式は水を貯めたときに堤体にかかる水圧をすべて周囲の岩盤に逃がすため、地質が良く強固な岩盤で、しかも狭い谷の場所にしか造ることができない。「ラッシュの電車の中でドア際の女の子を両手壁ドンで守る細マッチョのイケメン」を想像してほしい。イケメンが支えても電車の壁が弱ければ決壊してしまうのだ。いやイケメンである必要はないけど。

両手壁ドンする細マッチョなイケメン(佐々並川ダム/山口県/中国電力)

アーチ式が造れないとなれば次に選択肢に上がるのは重力式である。重力式は本体の重さで水圧を支えるので、少なくとも左右の岩盤にアーチ式ほどの強さはなくて良い。だけど真下の岩盤には、重い本体による下向きの力と、水圧がその本体を押す下流向きの力がかかるので、この部分にはそれなりの強さがなくてはならない

「ライブの最前列でステージに殺到する観客を抑える恰幅の良い警備員さん」が踏ん張る床、といったようなイメージだ。自分でもあんまりな例えだと思うけど。

「押さないでください!押さないでー‼あーお客様!お客様ー‼」(四万川ダム/群馬県/群馬県)

そこで、重力式も造れないほど地盤が弱い場所にもダムを造るために生み出されたのがロックフィルダムだ(日本では戦後すぐでコンクリートが不足していたから、という理由もある)。基本的に本体のほとんどは岩山なので、まずコンクリートダムと比べて底面積がものすごく大きくなる。そのため、水を貯めたときの堤体が下流側に押される水圧が同じなら、それを受け止める面積が広くなるため、ある面積(単位面積という)あたりにかかる力は小さくなり、コンクリートダムに耐えられない強度の地盤の場所にも堤体を造ることができるのだ。

深く積もった雪の上を歩くのに、靴だと沈む場所でもカンジキなら歩ける、と言ったら分かってもらえるだろうか。

下流側と同じように上流側もなだらかに下まで斜面が伸びていて、この底の面積の大きさで地盤に優しく乗っかっている(胆沢ダム/岩手県/国土交通省)

というわけで、ダム建設の適地にアーチ式ダムや重力式ダムが次々と造られた結果、現在ダムが計画されている地点はあまり地盤の良くない場所が多くなり、今後はロックフィルダムが主流となるだろう。

……と数年前に書いたのだけど、その後調べたところ、現在計画されているロックフィルダムはたった3基、主流になると思われたセンターコア型は新潟県で建設中の鵜川ダムと大阪府で建設中の安威川ダムの2基だけになってしまった。あと1基はコンクリート表面遮水壁型で栃木県に建設される南摩ダムである。

まさかセンターコア型の計画がこんなに早くなくなると思わなかったし、現状最後のロックフィルダムがコンクリート表面遮水壁型になるとも予想していなかった。

実はこれには、最近になって台形CSG型ダムという日本発祥の新型式が実用化され、いくつかのロックフィルダムの計画が台形CSG型に変更されたという大きな理由がある。台形CSG型はコンクリートダムでもなくフィルダムでもない新しい型式なのだけど、ここで説明すると長くなるのでまたいずれ。

 
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WRITER
萩原 雅紀
萩原 雅紀
ダムライター、ダム写真家。1974年東京生まれ。ダムと名のつくものすべてを対象に、ライフワークとして「ダムめぐり」を続けている。これまで訪れたダムは国内外合わせて500基以上。毎年末に「日本ダムアワード」を主宰。ダムカードの発案にも携わる。著書に『ダム』『ダム2』(メディアファクトリー)、『ダムに行こう!』(学研プラス)等。
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