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萩原雅紀の「ダム」道。【20】いまこそ盛り上がれ!ロックフィルダム・イン・ジャパン・フェス2020

萩原雅紀の「ダム」道。【20】いまこそ盛り上がれ!ロックフィルダム・イン・ジャパン・フェス2020

地域によってカラーが違う!

さて、いよいよロックフィルダムの見どころを紹介したい。

何と言っても、やはりコンクリートダムにはない裾野の広がり感と、それに伴う堤体のボリューム感は魅力だ。あと、登ったり降りたりしても大丈夫そう、落ちて死んだりしなさそう、という雰囲気から転じて「優しさ」を感じる、という人もいる。女性的なイメージを抱く人が多いのではないかと思う。

優しくしてくれそう(奈良俣ダム/群馬県/水資源機構)

そのほかの見どころとしては、堤体を構成する材料は基本的に地元で採取されるので、その地域によって堤体の色が変わる、という点が挙げられる。真っ白な堤体もあれば、黒っぽい堤体、茶色い堤体、それらが混ざったモザイク模様の堤体など、また、表面に草が生えて緑に覆われている堤体もあり、色で言えばコンクリートダムよりバラエティに富んでいる。

真っ白な岩が積み上げられている白亜のダム(南相木ダム/長野県/東京電力)

全体が黒い石で覆われている漆黒のダム(七ヶ宿ダム/宮城県/国土交通省)

いろいろな色が混ざってマーブル模様のダム(殿ダム/鳥取県/国土交通省)

ロックフィルダムの堤体表面は「リップラップ」と呼ばれ、堤体そのものを保護したり見た目を美しく保つ役割がある。リップラップが平らに整えられているダムと、特に整えられていないダムがあって、前者には「美しさ」、後者には「風格」がある、と年季の入ったダム好きたちは言う。美しいリップラップは、リップラップ職人と呼ばれるショベルカーのオペレーターがひとり、黙々と岩を掬い、ショベルを操作して向きを吟味しながら並べて整えている。まさに職人技である。

あり得ないくらい美しく整えられている(七ヶ宿ダム/宮城県/国土交通省)

特に整えられていないロックフィル(広瀬ダム/山梨県/山梨県)

もうひとつ、ロックフィルダムならではの特徴としては、「洪水吐の巨大さ」を推したい。

岩や土を積み上げて造る、という構造から、ロックフィルダムは万が一の計画規模を超える大雨の場合でも、何があっても堤体の上を水が越えることは許されない

これがコンクリートダムなら、放流能力以上の流入があって貯水池の水位が上がり続け、万が一堤体の上を水が越えたとしても、たとえば水門の開閉機構が故障したりといった細かいダメージはあるかも知れないけれど、堤体が決壊することはまずあり得ない。

しかしロックフィルダムは、堤体の上を水が越えるとロックやコアが流れ出し、決壊に至る恐れがあるのだ。そこでロックフィルダムは本体に放流設備を設置せず、堤体近くの岩盤を削って、同程度の規模のコンクリートダムと比較しても巨大な洪水吐が設置されている。具体的には放流能力を高くしてある、ということだと思うけれど、絶対に堤頂越流はさせない、という設計者の強い決意のようなものが感じられるのだ。

いろいろな水門が設置されている上に構造がかっこよくてでかい(寒河江ダム/山形県/国土交通省)

堤高50m未満とそれほど大きくないダムながら非常用洪水吐のこの長さ!(松ヶ房ダム/福島県・宮城県/福島県)

最後にあとひとつだけ、ロックフィルダムを観に行ったらぜひ観察してほしいのが「よもり」である。

上に書いたように、ロックフィルダムは岩や土を積み上げて造られているので、厳密に言えば堤体はコンクリートのように固定されてはいない。だから、建設から時間が経ったり地震に遭遇したりすると、多少なりとも堤体が「締まり」、天端の高さが下がることがある

実は、ロックフィルダムは建設時にそれを見越して、天端の真ん中部分を設計図の標高よりも微妙に高くしてあるのだ。これを「余盛り」という。天端の端に立って真ん中方面を見ると、微妙に盛り上がっているのが分かるダムも多いので、ぜひ観察してほしい。地味すぎる楽しみ方だけど

分かりやすく真ん中が盛り上がっている(殿ダム/鳥取県/国土交通省)

 
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WRITER
萩原 雅紀
萩原 雅紀
ダムライター、ダム写真家。1974年東京生まれ。ダムと名のつくものすべてを対象に、ライフワークとして「ダムめぐり」を続けている。これまで訪れたダムは国内外合わせて500基以上。毎年末に「日本ダムアワード」を主宰。ダムカードの発案にも携わる。著書に『ダム』『ダム2』(メディアファクトリー)、『ダムに行こう!』(学研プラス)等。
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