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秋本 佑の「建築を読書する」【02】建築設計事務所の本屋plateau booksは「ピカピカな店」をあえて目指さない

秋本 佑の「建築を読書する」【02】建築設計事務所の本屋plateau booksは「ピカピカな店」をあえて目指さない

「つながり」を求めて本屋を開く

まず気になったのは、「なぜ建築設計事務所が本屋を経営しているのか」ということ。本屋のデザインや施工を建築事務所が行うのは別に当たり前のことかもしれないが、その経営までを手がけるのはめずらしい。

「これまで建築の仕事として、10年ほど前から大型の本屋から小規模の本屋まで『本屋そのものをつくる』ということはいくつも行ってきました。そんな中、『もっと街や人とつながりたい』と思うようになり、本屋をはじめることにしたのです。この時代、正直に言って本屋専業ではなかなか難しい面もありますが、(建築設計事務所との)兼業でならやっていけると考えました」(中里さん、以下同)

事務所を東日本橋から移転するタイミングで、本屋も併設できる物件を探したという。白山に事務所を移転したのは昨年11月のことだった。

店内にはこだわりを持って選んだ本が並ぶ

ちなみに中里さん、小さい頃は大工さんになりたかったのだとか。高校・大学と建築を専門的に学び、はじめは地方のゼネコンで公共建築などの建設現場の施工管理に8年ほど携わった。その後、都内の商業建築の会社で5年ほど働き、独立。商業建築が面白いのは、「仕事をするたびに、街に知り合いがどんどん増えていくこと」だと話す。

そんな彼が考える本屋の魅力は、やはり「さまざまなつながりが生まれる」こと。本屋で出会った一冊の本をきっかけとして自分の世界が広がった経験や、本屋という場を通じて出会った人と意気投合して交流が始まる、ということは、筆者の実感としても、たしかにある。

plateau booksが目指すのは「街の駄菓子屋さんのように人が集まる本屋さん」である。「本を売る」=「お金を稼ぐ」と画一的に捉えるのではなく、「本をきっかけにして、必ずしもお金に換算できないもの(例えば、人と人とのつながり)を生む」のが理想だという。

使いながら良さを足していく空間

plateau booksを、中里さんと東京建築PLUSのスタッフたちはどのような空間に仕上げたのか。

この建物、もともとは精肉店が入居していた物件で、現在の本屋部分は事務所、建築設計事務所部分は冷蔵庫だったらしい。本屋部分については、従来の建築のまま、あまり手を入れていないという。

タイルの剥がれた跡がそのままの柱

彼らが意識したのは、「ピカピカにしない」こと。それはいったい、どういうこと?

「商業空間をつくる際、白く塗ったり、綺麗にしたりするのはとても簡単なんです。しかし、そうしてしまうと『つくり終わった段階が100点満点』という感じになってしまうことが多い。商業施設をつくっていながら言うのもなんですが……(笑)。そうなれば、古くなるにつれて魅力はマイナスになる一方です。

我々は、はじめに完璧に作り込んでしまうのではなく、使っていきながら良さを足していくような空間にしたいと考えました。だから、家具もあえて古いものを集めて使っています。ピカピカな空間は、我々ではない人がつくればいい。我々は、そうではないところを目指しました」

たしかに彼の言葉通り、店内の壁などを見ると「かつてのまま」なことがよく分かる。なぜか一部分だけが切り取られた壁がそのまま残っていたりするのも、「ここには以前は何があったのだろう?」と想像力が刺激される。それもまた、plateau booksの他にはない魅力だ。

なぜか一部が切り取られた壁

各所に置かれた植物が良いアクセントになっている

店内ではコーヒーも愉しめる

間接照明を用いたキッチンスペース

棚の隙間から光が漏れているのがお分かりだろうか?

 
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WRITER
秋本 佑
秋本 佑
本(読書)大好きライター。小学生の頃、江戸東京たてもの園で前川國男邸を見て以来の建築好き。建築の専門教育は受けていないものの、「建築ファン」のひとりとして、note(https://note.mu/task_akimoto/m/md67488f9638c)に記事を書くなど。
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