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秋本 佑の「建築を読書する」【04】音楽家夫妻の想いがいまも息づく古民家ブックカフェ・松庵文庫

秋本 佑の「建築を読書する」【04】音楽家夫妻の想いがいまも息づく古民家ブックカフェ・松庵文庫

「空間を残したい」という想い

この建物はもともと、音楽家夫妻が住んでいた住宅。1階にはグランドピアノが置かれ、音楽教室としての使われ方もしていたようだ。それが、ご主人が亡くなったことにより、奥さまひとりで住むには広すぎるからと、建物を手放し、取り壊すことになった。ただ、手放す前に近所の人たちに建物の中を公開する機会が設けられ、当時この建物のすぐ近くに住んでいた岡﨑さんもなんの気なしにその見学会に参加したという。

 

「この空間がなくなってしまうのは、もったいない」

 

それが、彼女が建物の中を見てまず思ったことだった。

ていねいに使い込まれた様子が伝わってくる玄関まわりや、80年以上前に建てられたとは思えないモダンなデザインなど建物そのものの魅力もさることながら、庭に根を張る1本のツツジの木がとても印象的で、それがなくなってしまうのはもったいない、と思ったそうだ。そんな話を奥さまにすると、残したいと思っていた奥さまから建物を使ってくれないかという話があり、しばしのやりとりの末、岡﨑さんが建物を使うことになる。

ていねいに使い込まれたことが分かる柱

夜になり、ライトアップされたツツジ

ただ、「空間を残したい」という願いはあったものの、具体的にここで何かをする、というプランやノウハウがあったわけではなかったという。初めはシェアハウスのような形にすることも構想にあったそうだが、専門家も交えて検討したところ、シェアハウスにして細切れにしてしまうとこの建物のダイナミックさが活かしきれない、という結論に。

時間や空間を共有する、という視点からさらに検討した結果が、現在の「1階はカフェとギャラリー、2階はイベントスペース」という形に改装することだった。「この空間でコーヒーを飲みながら文庫本を読めたら、素敵な時間になりそうだ」との想いから、「松庵文庫」という名前が生まれてきた。

 
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WRITER
秋本 佑
秋本 佑
本(読書)大好きライター。小学生の頃、江戸東京たてもの園で前川國男邸を見て以来の建築好き。建築の専門教育は受けていないものの、「建築ファン」のひとりとして、note(https://note.mu/task_akimoto/m/md67488f9638c)に記事を書くなど。
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