ロンロ・ボナペティの「名建築の横顔~人と建築と」【2】FOAの横浜港大さん橋国際客船ターミナル

「あの名建築」は、いまどのように使われているのだろうか?
竣工当時高く評価された建築のその後を取材する本シリーズでは、建築と、それに関わる人びととの関係を探っていく。
第2回は、篠原一男ら日本の著名建築家も多く参加した国際コンペで斬新なアイディアで一等となり、注目を集めた横浜港大さん橋国際客船ターミナル。
2002年の開業後20年近くが経った現在、市民にとってどのような場に育ったのだろうか。いまの姿を取材してきた。
ワクワクを与えてくれるランドスケープ
名建築に出合ったとき、必ずと言っていいほど思うことがある。「こんな場所がほかにも増えればいいのに」と。建築好きなら誰しも抱いたことのある感情ではないだろうか。
「横浜港大さん橋国際客船ターミナル」もそのひとつだ。
国際客船ターミナルとイベント用ホールを備え、屋上が公園として開放されているこの施設は、大都市の中心にありつつもうらやましくなるような憩いの場をつくり出している。
なんと言ってもその見どころは起伏に富んだ床だろう。
2階のホールから屋上に上がるアクセス・スロープ、そして屋上広場全体に広がる人工の丘は、階段を使わずに建物全体を一周できる、ゆるやかなランドスケープとなっている。
ほんの少しの高低差が身体を活性化させるのか、スキップしたくなるような高揚感を生み、水平面に慣れきってしまった私たちを楽しませてくれる。
そしてもうひとつ、「そこに行けばなにか良いことがあるのではないか」という漠然とした期待感を抱かせる建築でもある。
イベントや客船の入出港という具体的なものだけではない、横浜の港湾エリアに漂う祝祭性のようなものが、この建築に凝縮されているように感じるのだ。それはもしかすると、ここを訪れる人びとがみな、何かしら非日常の体験を求めて集まっているからかもしれない。自然と足が向いてしまう、ワクワクさせてくれる建築だ。
全長400mという規模、そして客船ターミナルとホールを併設するという特殊な建築とはいえ、転用できることもあるのではないか――。
そのヒントを明日の名建築を生み出す糧にしたい、そんな使命感を胸に取材へ向かった。

ホールから屋上広場へ続くアクセス・スロープ

屋上広場「くじらのせなか」

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