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ロンロ・ボナペティの「名建築の横顔~人と建築と」【3】丹下健三のゆかり文化幼稚園

ロンロ・ボナペティの「名建築の横顔~人と建築と」【3】丹下健三のゆかり文化幼稚園

「あの名建築」は、いま、どのように使われているのだろうか?

竣工当時高く評価された建築のその後を取材する本シリーズでは、建築と、それに関わる人びととの関係を探っていく。

第3回は、丹下健三が設計し1967年に竣工した「ゆかり文化幼稚園」。建築家として最も勢いのあった時期に、子供のための施設を設計している。

公共建築のイメージの強い丹下が手がけた幼稚園とは、どのようなものなのだろう?

ひとつとして同じ風景のない「子供の城」

「子供の城をつくる、それが園舎を設計するときのテーマだったんです」

そう語ってくれたのは教務主任の須藤友紀さん。一を聞けば十答えてくれる須藤さんのこの建築への愛が伝わってくる。

「『園舎に色は必要ない。子供たち一人ひとりに色があるから』。丹下さんはそう考えたそうです。一般的な幼稚園の園舎には、いろんな色やキャラクターがあしらわれることが多いんですけど」

そう言われて園内を見渡すと、確かにコンクリートの白と木材の茶以外、ほとんど色や素材が使われていないことに気づく。

しかし、それ以上に驚かされたのは、事前に抱いていた印象と実際に建物に立って目に入った光景とのギャップである。園庭を囲むように扇状に広がる形式的な計画でありながら、ひとつとして同じ風景が見当たらないのだ。

ゆかり文化幼稚園の空撮。園庭を囲むように放射状に広がる平面(写真提供/ゆかり文化幼稚園)

小ホール。大きく開口部が設けられ、季節や時間帯によっても景色が移り変わる

5歳児用の保育室。奥行きの広い保育室や幅が広い保育室など、形状はさまざま。

大小さまざまな保育室には、ところどころに窪みのような空間が設えられ、保育室同士をつなぐ空間も画一的な通路ではなく、場所ごとにさまざまな表情を見せる。地形に沿って階段状に連続するベランダ空間も、複数のスケールが用意され、目的に応じて使い分けられるようになっている。

「園舎を設計する前に、丹下さんは1年間、幼稚園に通って子供の活動を観察されていたそうです。子供だからといっていつも元気でいるわけではなくて、時にはひとりでいたかったり、お友達とふたりで静かに遊びたいときだってある。その時々のいろんな気持ちに寄り添いたいということで、いろんな居場所をつくったようですね。細部まで本当に真四角のないデザインになっているのもそのためです」

いろんな空間を用意することは、多目的に使うことだけでなく、多様な空間に応じたさまざまな関係性を育むことにもつながっていく。

保育室右手奥の窪みの空間はトイレ

保育室同士をつなぐ通路。広い空間に柱が立ち並ぶ

連続するヴォールト屋根。柱の割付を変えるだけで多様な空間が生まれている

建物から連続して園庭まで伸びるベランダ空間。段差の多い建築だが事故はないという

この建築全体が子供たちにとってはたまらない遊び場だろう。まさに「子供の城」と呼ぶにふさわしい。

実際、入園当初は園児がいろいろなところに紛れてしまって、先生同士トランシーバーを使って居場所を教え合っているという。

最低限行ってはいけない場所は教えつつも、子供を無理やり拘束することなく、みずからの意思で保育室に戻るよう促すおおらかな対応は、園の理念に基づいている。

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WRITER
ロンロ・ ボナペティ
ロンロ・ ボナペティ
「専門知識がなくても楽しめるように建築の魅力を伝える」がモットーの建築ライター・編集者(と名乗る黄色い鉛筆)。大学院の建築コースを修了後、建築系のコンテンツ制作に携わる。国内外の都市や建築を巡って得た気づきをコンテンツプラットフォームのnote(https://note.mu/ronro)で発信中。
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