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ロンロ・ボナペティの「名建築の横顔~人と建築と」【7】長谷川逸子の湘南台文化センター

ロンロ・ボナペティの「名建築の横顔~人と建築と」【7】長谷川逸子の湘南台文化センター

これからの文化センター

建築家の掲げた理想が高いレベルで実現し、市にとっても重要な役割を果たしている。

湘南台文化センターがいまも輝いていることを実感し、それだけに残念でならないことがあった。

建物の老朽化が目に付き、部外者からするとどうしても寂れた印象を受けてしまうのだ。

右側の球体が市民シアター。外壁の塗装が剥がれ、ブリッジ部分のパンチングメタルには錆が目立つ

「現状大規模な補修予算が付かず、最低限の設備の入れ替えや法規変更への対応など、応急処置的な対応しかできていない状況です」(井澤さん)

現在建てられる公共施設は中長期メンテナンス計画を前提としているそうだが、湘南台が建てられた当時はそのような制度もなかった。

特徴的なデザインであるがゆえに、改修工事の難易度の高さが費用にも直結するのだという。

それでも「建物の目標保全年数である70年は使いたい」と、3人の建築に対する思い入れは強い。

随所に施された装飾は、長谷川氏が各地から集めた名工の手によるもの。こうした「一点モノ」の作品は維持管理のハードルにもなる

昨今、日本の建築界を牽引してきた建築家による数々の名作・代表作が老朽化や再開発の煽りを受け、取り壊しの憂き目に合っている。

ひとりの建築ファンとしては、名建築が取り壊されることにはもちろん寂しさを感じる。しかしそれ以上に、「優れた建築を後世につないでいこう」という動きが業界の枠を超えて、さまざまな人々が主体となって知恵を出し合う――そんな社会を期待してしまう。

3人の口ぶりからも、湘南台文化センターに対して強い愛着をもち、長く存続してほしいと願う人はきっと市民にも数多くいることと思う。

多くの人に必要とされ続けることが、建築が長く建ち続ける上での最低条件であることは間違いない。

 

「この建築は俺がつくったんだよ」

コンペ後のディスカッションの場で、長谷川氏の設計案に反対意見を表明し、繰り返し議論に参加していたある藤沢市民の方が、文化センターを訪れる人にそう紹介していたという逸話が残っている。

長谷川氏はそれを聞いて困難な調整が実を結んだことを、誇りに感じたと語っている。

建築と社会との関係性を省みる記念碑的な建築として誕生した湘南台文化センターが、今後どのような運命を辿るのか。

その過程もまたこれからの建築のあり方を占う試金石となるだろう。

少しでも多くの人がこの文化センターと関わるきっかけをもってほしいと願いつつ、その行く末を注視していきたいと思う。

ロンロ・ボナペティの「名建築の横顔~人と建築と」【公開記事リスト】

【1】kw+hg architectsの武蔵野プレイス

【2】Foreign Office Architectsの横浜港大さん橋国際客船ターミナル

【3】丹下健三のゆかり文化幼稚園

【4】伊東豊雄の笠間の家

【5】西沢大良の日本基督教団 駿府教会

【6】アントニン・レーモンドの聖路加国際病院旧館

【7】長谷川逸子の湘南台文化センター

【8】石山修武の北清掃工場

 
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ロンロ・ ボナペティ
ロンロ・ ボナペティ
「専門知識がなくても楽しめるように建築の魅力を伝える」がモットーの建築ライター・編集者(と名乗る黄色い鉛筆)。大学院の建築コースを修了後、建築系のコンテンツ制作に携わる。国内外の都市や建築を巡って得た気づきをコンテンツプラットフォームのnote(https://note.mu/ronro)で発信中。
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