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ロンロ・ボナペティの「名建築の横顔~人と建築と」【9】村野藤吾のルーテル学院大学

ロンロ・ボナペティの「名建築の横顔~人と建築と」【9】村野藤吾のルーテル学院大学

「ひとつながり」なキャンパスの謎

案内していただいたのは、事務管理センター長の山田 滋さん。

大学の広報活動の一環として、取材や見学の問い合わせに対応しているそう。

「日曜の礼拝は学外の信者の方も参加されています。外部の方が訪問される機会の多い建築ではありますね」

そのような建築を、教員や学生たちも好意的に捉えているようだ。

「取材や見学のお問い合わせがあると、改めて価値のある建築なんだなと実感します。メンテナンスは大変ですが、職員のあいだでも大切に守っていこうという意識が共有されていると思います」

低層の建築が連なり日当たりが良い。植栽もよく手入れされた、散策したくなるキャンパスだ

礼拝堂内部。複雑な要素が統合され、村野建築らしい雰囲気を生んでいる

祭壇横には坪庭が設置されている

大学には、牧師をはじめ教会関係者を進路とする神学コースと、心理学や福祉等を学ぶ文化系のコースが併設されている。神学コースに通う学生は全員入寮し、生活のなかでキリスト教の教えを学んでいく。

創建当初は神学大学として建築されたものが、のちに学部新設や生徒数増加に伴い、増築された格好だ。

「増築の際は村野先生は亡くなられていて、村野先生のお弟子さんだった建築家の方に設計をお願いしました」

そう言われるまで気づかないほど、増築部分は違和感なく既存建築と同居していた。

それでいて意識して見ると違いがわかる程度にデザインを変えていて、師匠の設計に対する敬意が感じられる。

礼拝堂正面。向かって右手に見える建物は既存部分、左手に見えるのが増築された棟。デザインのトーンは統一されているが、窓の割付や天井高など、意識的に変更が加えられている

既存の学生寮。不思議な造形は、出窓部分に配置された勉強机との関係を考えて設計された

廊下にはスリット窓から光が入ってくる。特別凝ったデザインではないものの、変化に富んだ空間だ

教員用の会議室。床のフローリングや椅子など、当時のまま使用されている

「それほど広いキャンパスではないんですけれど、着任してすぐだとキャンパス内で迷ってしまう教員もいますね」

たしかに分棟形式ではなく、ひとつながりに続く空間は、自分がいまどこにいるのかが分かりにくい。

キャンパスマップ。「ブラウンホール」と「図書館」の右手前部分が増築箇所。トリニティホールは別棟で新築されたもの

外から見ると礼拝堂が中心にあるが、メインエントランスからホールを抜けて礼拝堂へ続くような、キャンパス全体の中心となるような動線は用意されていない。

外装が統一され、全体をひとつの大きな膜で覆ったような仕上げも、その印象をより強くしているように思う。

キャンパス内を歩いていると似たような建物を何度も見かける

校舎裏にひっそりと設けられたエントランス

なぜそのような計画になったのか。そこには村野の設計指針となったある講演が関係している。

 
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WRITER
ロンロ・ ボナペティ
ロンロ・ ボナペティ
「専門知識がなくても楽しめるように建築の魅力を伝える」がモットーの建築ライター・編集者(と名乗る黄色い鉛筆)。大学院の建築コースを修了後、建築系のコンテンツ制作に携わる。国内外の都市や建築を巡って得た気づきをコンテンツプラットフォームのnote(https://note.mu/ronro)で発信中。
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