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首都高研究家・清水草一の「高速道路」道!【01】首都高の魅力は“猥雑さ”にあり!

首都高研究家・清水草一の「高速道路」道!【01】首都高の魅力は“猥雑さ”にあり!

レインボーブリッジの感動を封鎖するな!

私の専門分野は、自動車と高速道路。もともとは自動車の専門家(モータージャーナリスト)で、自動車が走る舞台としての道路、なかんずく高速道路に激しい愛と憎しみを抱き、その流れでそちらの専門家(首都高研究家&交通ジャーナリスト)にもなった。ちなみに憎しみは、主に渋滞に対するものである。

しかし思い起こせば、どちらに先に魅力を感じたかといえば、高速道路だ。

確か中学生の頃。父が家族一同を赤坂に食事に連れていってくれた。それは生涯2~3回しかなかったような贅沢であった。

何を食べたかは覚えていないが、帰路、父は家までタクシーを奮発してくれた。運ちゃんは威勢よく首都高に乗り入れた。

首都高から見る東京の夜景。それはとてつもなく美しくて未来的だった。小さい頃図鑑で見た、立体交差の未来予想図的な光景がすでに存在していたことに、私は驚愕した。

私は今でも、レインボーブリッジを渡るたびに感動する。そして思う。「これこそ日本を代表する美しい風景である」と。レインボーブリッジからの景色に勝てるのは、富士山くらいではなかろうか? 富士山と京都の桜、そしてレインボーブリッジ。これが日本三景ではなかろうか。

「一富士二桜三レインボーブリッジ」である。

この意見に賛同してくださる方は、決して少なくない。特に地方出身者に。

「マジ、東京ってメチャメチャすげえって思いました」(岡山県出身)

「ここはニューヨークか? ってビックリしましたよ」(栃木県出身)

まだ新幹線も乗ったことがないと言う女性(長野県出身)は、レインボーブリッジからの夜景に、「やばっ」とつぶやいて、涙ぐんでくれた。

高速道路はカッコいいし、首都高からの景色は美しい。それは間違いのない事実だが、なぜかメディアに取り上げられる機会は多くない。おそらく、高速道路がステキだなんて言ったら超アナクロだし、どこかバカっぽいからだろう。

首都高は猥雑なゴールデン街である

逆に、高速道路を貶めるのは、知的で進歩的なことだとされている。中でも首都高は、よく憎しみの対象になる。東京の風景を破壊する存在であると。

たとえば、アウディでチーフデザイナーとして活躍された高名なデザイナーは、「首都高には計画的に建設された形跡は見られず、その無秩序な導線が東京を圧迫している」という趣旨のことを書かれている。

彼は、段階的に現状の首都高を廃止し、22世紀には外濠の内側から高層ビルもなくし、皇居や水辺から緑のグラデーションが広がる、丘と水路の街というモデルを描いてらっしゃる。

私は、アウディのデザインは実に緻密で美しいと思うが、東京をアウディのような街にすることには反対だ。そんな東京ができたとして、みんな喜ぶのか。外国人環境客が大挙押し寄せるのか。

否である。そんなのは東京ではないだろう。

私は先日、数十年ぶりに新宿のゴールデン街に行って腰を抜かした。若い頃はわからなかったが、いま見ると、いかがわしいバーが雑然と建ち並ぶゴールデン街の風景は、ものすごくカッコよかったのだ。超絶クールだった。アウディのデザインよりも。

さらに驚いたのは、ゴールデン街を歩く人間の、半分以上が外国人観光客になっていたことだった。彼らにとって、これこそアメージングなニッポンの光景なのである。

首都高はゴールデン街だ。正確には、高速道路界のゴールデン街だ。

何かに似ている新宿ゴールデン街のゴチャゴチャ感。(写真/PIXTA)

確かにそこには、練りに練られた計画性はない。なにしろ、計画決定から当初区間の完成まで、わずか5年しか猶予がなかったのだから。わずか5年の間に、東京という巨大都市の道路交通問題を一挙に改善するウルトラCを実現する必要があり、そのために練りに練られたルートが、川や道路の上、あるいは運河の底を使うことだった。この無理矢理さこそ、世界に誇る日本の突貫工事、アメージングな東京そのものではないだろうか。

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WRITER
清水 草一
清水 草一
1962年東京生まれ。慶応義塾大学卒業後、編集者を経てフリーライター。代表作『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』『浜崎橋はなぜ渋滞するのか?』などの著作で首都高研究家・交通ジャーナリストとしても活動中。『週刊SPA!』など連載多数。日本文芸家協会会員。
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