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清水草一の「高速道路」道!【14】至福!まだ見ぬ第二東京湾岸道路の妄想

清水草一の「高速道路」道!【14】至福!まだ見ぬ第二東京湾岸道路の妄想

首都高建設の終わりに

先日、首都高大井ジャンクション連絡路の架け替え部開通直前の取材会で、首都高速道路株式会社建設部のエンジニアと立ち話をする機会があった。

 「まもなく首都高の建設も終わってしまいますね」

エンジニア 「そうですねフフフ」

私 横浜環状北西線ができたら、残るは埼玉大宮線の延伸部だけじゃないですか。あれは首都高のエンジニアとしては、あんまり手応えがないんじゃないですか」

エンジニア 「というと?」

 「新大宮バイパスの真ん中に高架線を造るだけなんて、技術的に簡単すぎるでしょう。なにせ首都高は、このあたり(※羽田線東品川桟橋付近の大規模更新を含む)を見ても、ものすごく難度の高い工事だらけなので」

エンジニア 「そんなことはないですよ。私は技術屋なので、造れればいいんです」

 「そ、そうなんですか!」

エンジニア 「難しい工事もやりがいはありますけど、難しければ難しいほど、いろいろな関係団体との調整が大変になりますから」

彼は「技術屋としては、しちめんどくさい調整なしに、スパッと造れるものを造っていたいんですよ」と言いたいようだった。

 「じゃ、今後どんなものを造ってみたいですか」

エンジニア 「そうですね。第二湾岸とか(笑)」

 「第二湾岸ですか!」

第二湾岸。その言葉を聞くのは久しぶりだった。

第二湾岸(第二東京湾岸道路)とは、千葉県の富津岬付近を起点に、東京湾の海寄りに沿ってぐるりと回り、東海ジャンクション付近の首都高湾岸線に着地して終点となる計画の道路だ。現在も国交省の計画として残っているが、ルート上の三番瀬付近が野鳥の楽園となっていることから、その保全のため、2001年に千葉県知事・堂本暁子氏が埋め立ての中止を決定し、以来、宙に浮いている。

東京湾をぐるりとまわる第二東京湾岸道路案(国土交通省Webサイトより)

第二湾岸については、2000年刊の自著『首都高はなぜ渋滞するのか!?』で、私はこのように記している。

「この道路はまだ計画段階で、事業主体がどこになるかも決まっていないが、首都高速道路公団としては、外環道接続予定地から東京寄りについて、是非、やらせてもらいたいと建設省に対して運動している。

 しかし、浦安から西側は予定線の半分以上が海の上を走っている。これでは大友克洋のアニメ『AKIRA』のネオ東京そのもので、まったく現実感が湧かない。

 現状ではまるで夢のような第二湾岸計画だが、公団は決してそんなことはないという。完成は中央環状品川線と同時期、2015年前後と想定しているというから意外に早い。

 しかし、市川市や行徳市沖に広がる三番瀬が野鳥の楽園となっていて保護が必要と決まり、埋め立て面積が大幅に削減されることになった。これに伴って第二湾岸も陸地側に大幅に移動しなければならないが、そのルートがまだ決まっていない。それさえ解決すれば、意外と早く開通できるということだ。(中略)

 が、この建設には、高谷(外環道)-東海間だけで最低1兆円はかかると思われる。千葉県には、もう一本東京湾アクアラインというルートが存在する。そちらが有効利用されるようになれば、第二湾岸建設の必要度は低くなるはずだ。1兆4000億円を海に沈めたままで、また新たに1兆円を東京湾に投入すべきかどうか」(本文より)

長い引用になったが、三番瀬埋め立て工事中止決定直前の、第二湾岸の具体的な計画内容が理解できるだろう。

私の結論としては、アクアラインを1000円に値下げし(※当時は4000円)、そちらをバイパスとして利用しつつ、湾岸線も効果的な拡幅や国道357線立体部の建設で流れをスムーズにすることで対応できるはず、第二湾岸は必ずしも必要ではない、としている。

東京湾アクアライン値下げの効果は絶大だった(写真/Adobe Stock)

以来19年間、現実は、ほぼ私の提案通りに動いてきていた。首都高湾岸線は、東行きの有明ジャンクション-葛西ジャンクション間が片側3車線から4車線になり、国道357号線に関しては、今年東京港トンネル東行きがついに開通。アクアラインは800円に値下げされた。

湾岸線の渋滞は、解消にはほど遠いとは言え、19年前よりははるかに改善されている。

 

ところが、今年になって、第二湾岸道路計画が再始動しているのである。

1月に、石井国交相が検討会の設置を表明。9月には、第1回千葉県湾岸地区道路検討会幹事会が開催され、「これは第二東京湾岸道路の計画を踏襲するものではなく、規格の高い新たな道路である」と強調された。

つまり、従来の第二湾岸計画にとらわれず、新しい高速道路のルートを考えましょうということだろう。くだんのエンジニア氏の血もたぎろうというものだ。

 

私はこれまで、既存の高速道路インフラを効率よく利用して、新規建設費を抑えつつ混雑を緩和する策を考えてきた。だから「第二湾岸は要らない」という立場だった。

巨大なものを新たに建設して渋滞を緩和するのは、言ってみれば簡単だ。しかし、そんなことを市井のマニアが提案したところで、夢物語でしかない。だからより現実的な、少ない費用と短い工期で可能な対策をもっぱら提案してきた。実際にこの19年間、首都高湾岸線の渋滞対策はその方向で進んできた。

しかし、私だって本当は、港珠澳大橋みたいな“夢”を考えてみたい。人口減少が続く日本だけれど、東京だけは今後もあまり人口は減らないと予想されている。投資を続ける価値はある。というより、東京に投資せずして日本経済の未来はないだろう。

港珠澳大橋のような夢のある橋や道路が見たい!(写真/Adobe Stock)

そこで今回は、私なりの第二湾岸計画を考えてみた。

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WRITER
清水 草一
清水 草一
1962年東京生まれ。慶応義塾大学卒業後、編集者を経てフリーライター。代表作『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』『浜崎橋はなぜ渋滞するのか?』などの著作で首都高研究家・交通ジャーナリストとしても活動中。『週刊SPA!』など連載多数。日本文芸家協会会員。
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