清水草一の「高速道路」道!【15】死ぬまでに実現してほしい「外環道補完計画」

高速道路建設の有終の美を飾るのはどこ?
高速道路に限らず、日本のインフラ建設は、おおむね終了しつつある。
たとえば鉄道は、いわゆる我田引鉄による野放図な路線拡大もあって、国鉄の経営が破綻状態に陥り、中曽根総理が民営化を断行。以後、新線の建設は採算性の確保が第一となり、採算性のない路線の廃線も進んだ。
その結果、半世紀前に比べると、国鉄(現JR)の総延長距離は若干減少。民鉄も含めると微増になるが、50年間、ほぼ横ばいで推移している。
一方高速道路はというと、国鉄民営化に遅れること約20年、こちらも道路四公団による採算を無視した路線の延長によって、「このままでは第二の国鉄だ」と大問題となり、小泉総理の下、民営化が断行された。
ただ、鉄道と違って、高速道路は廃線になった路線はなく、建設中止が決まった路線もない。採算性が望めない路線に関しては、「新直轄」という制度によって税金で建設される(料金無料)ことになり、その他の路線では、建設費のコストダウンを後押しするインセンティブ制度が導入された。
これに関して、民営化当時は「生温い」「骨抜きだ」という声が多数だったが、結果を見ると、効果は非常に大きかった。
公団時代末期、合計38.2兆円あった債務は、14年後の現在(2018年度末)、27.5兆円と、10.7兆円も減少している。建設を続行しながら借金を大幅に減らしたのだから、奇跡的と言ってもいい。
その内訳を見ると、純粋に節約(?)で返済したわけではないが、とにもかくにも債務が順調に減少し、しかもそれが予定を上回るペースならば、これほどの大成功はないだろう。
債務減少の要因としては、借入金の金利水準がずっと低いままであることも大きい。
なにせ巨額の借金だ。通常なら利子も巨額になる。道路公団民営化当時は、借入金の今後45年間の平均金利を4%で計算していたから、38兆円借金があれば、年に約1兆5千万円もの利払いが発生するはずだった。
ところが、高速道路保有機構の借金の現在の平均金利は、たったの1.02%。金利負担だけで年に1兆円も助かった計算だ。
政府・日銀は、デフレ脱却を目指してゼロ金利政策を継続している。ゼロに近い金利で借金ができるのだから、どんどんお金を借りて投資してくださいというわけですね。ただ思うように投資は広がらず、物価も上がらず、現状では金利が上がりそうな気配はカケラもない。
そういう背景もあってか、近年ついに高速道路の新規計画が動き出している。
新規と言っても、正確には「事業化されていなかった計画の再検討」だが、先月書いた第二湾岸については、ルートも見直して一から仕切りなおすとのことなので、新規計画と言ってもいい。
首都圏で、もうひとつ動き出している大物がある。外環道のミッシングリンク、東名から湾岸線までの区間である。これも計画自体は存在していたが、「調査中」のまま、ルートもまったく未定で棚ざらしにされてきた。
それが2年前から、国交省によって計画検討協議会が設立され、議論が始まっている。

外環道東名~湾岸線区間(図は国土交通省資料より引用)
実はこの区間について、以前私は「必要ない」としていた。計画中だった首都高の新規路線で補完できるからだ。

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