清水草一の「高速道路」道!【19】まぼろしの首都高「晴海線」の夢よ、もう一度

地下化するばかりの首都高に辟易
新型コロナウイルスの感染拡大に気を取られている間に、首都高都心部の再構築に関して、多くの動きがあった。
日本橋付近の地下化に関しては、昨年2月に基本方針が決まっていた。地下化によって江戸橋JCTでのC1-C1方向の接続ランプがなくなり、代わって八重洲線を活用して同方向の交通を確保するとされたが、八重洲線の先、西銀座ー汐留間のKK線(東京高速道路株式会社線)は大型車通行禁止のため、そこをどう解決するかは未決定だった。
それについて今年3月10日、国交省は、「首都高都心環状線の交通機能確保に関する検討会」にて、中間とりまとめを発表した。
検討会では、「KK線の構造強化」と「別線整備」の2案が検討されたが、最終的に「別線の地下整備案」の具体化に向け、関係機関と調整を進めることになった。

出典/首都高都心環状線の大型車交通の環状機能確保策(中間とりまとめ)
別線案が実現すると、KK線の交通量は激減すると予想されることから、それを受けた東京都の有識者会議は9月24日、現在のKK線道路部分を遊歩道に作り替えるという内容の提言書素案を提示した――というのが、主な流れである。
私はもともと、日本橋付近の地下化に関しては反対の立場で、それについては当連載でも何度か触れてきた。

地下化が決まった首都高日本橋区間(撮影/編集部)
だいたいドライバーは、地下を走りたいわけではない。日本橋付近のように、一部が地下化されて上ったり下ったりすれば、それだけで渋滞の原因にもなる。第一眺望がない。ドライバーにとって首都高の最大の美点は、走りながら大東京の景観を楽しめることにある。渋滞さえなければ、山もないのに地下へ潜りたがるわけがない。

C2山手トンネル(写真/PIXTA)
もちろん私も、山手トンネルの開通は心待ちにしてきたし、実際開通に際しては人生最大級の歓喜を味わった。しかし次第にその興奮も冷め、いまでは時間に余裕があれば、わざわざ遠回りしてでもC1を走るようになっている。そちらのほうが断然気持ちいいからだ。トンネルなんて、食物でいえば宇宙食みたいなもので、腹を満たす機能しかない。
しかも日本橋付近の地下化には、山手トンネルのような渋滞緩和効果はまったくない。「邪魔だから地下へ行け」という、約半世紀前の偉業を否定するような再構築だ。首都高の歴史を愛する者としては憤懣やるかたなし。
しかし、決まったものはしょうがない。勝手にやってくれ。そんな冷めた目で見ていたのだが、残されていたKK線問題は、西銀座-京橋間に別線(片側1車線)をトンネル構造で新設することになった。
またトンネルか……。と思いつつ内容をよく読むと、別線案採用の理由として、驚くべきことが書いてあるではないか。
将来的に高速晴海線と接続! そんなものが再浮上していたとは!

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