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清水草一の「高速道路」道!【20】 天から「6車線の新東名」が降ってきた

清水草一の「高速道路」道!【20】 天から「6車線の新東名」が降ってきた

「第二東名の橋脚、あのまま廃墟にするから」

2020年12月22日、新東名御殿場JCT-浜松いなさJCT間145kmの全線6車線化が完成し、同時にこの区間の最高速度が、正式に120km/hに引き上げられる。このことについて私は、非常に複雑な思いを抱きつつ、「とにかくよかった……」と心の底から思う。

新東名6車線化事業(出典/NEXCO中日本)

新東名については、個人的に深い思い入れがある。そしてほんの少しだけ、自分も貢献したかもしれないと思っている。

 

小泉純一郎首相の指示により、2002年から始まった道路四公団民営化議論。それ以前から中央の大マスコミは、「ムダな赤字高速道路の建設」に対して集中砲火を浴びせており、中でも第二東名(当時の呼称)はその象徴としてスケーブゴートにされていた。

このままでは第二東名の建設が中止されてしまう。私は、東名のどうにもならない混雑の実態を知る者として、同時にクルマと道路を愛する者として、大きな危機感を抱いた。自分に何かできることはないか。

そこで思いついたのが、間もなく発足する道路公団民営化委員会のリーダー的存在になると目されていた猪瀬直樹氏に、直談判することだった。直談判とはつまり、インタビューを申し込んで、その場でその必要性を主張するのである。

当日、西麻布の猪瀬直樹事務所を訪れた私に、猪瀬氏はのっけからこう言い放った。

「御殿場に立ってる第二東名の橋脚、あれをあのまま廃墟にするから」

猪瀬直樹氏と2ショット(2004年、筆者撮影)

「ちょっと待ってください猪瀬さん。確かにいらない高速道路はたくさんあります。でも第二東名や第二名神はいるんです。北関東道もいります。いる道路といらない道路があるんです!」

当初はまったく聞く耳を持たなかった猪瀬氏だったが、私が実際に全国の高速道路や、当時計画中だった高速道路路線に並行する一般道をほぼ実走調査済みであることを知ると、現場勝負のジャーナリストだけに、少し見る目が変わった。

私はその後も猪瀬氏に何度かインタビューを申し込み、何度も議論を重ねたが、当初は「高速道路計画の全面凍結」を主張していた猪瀬氏の姿勢も徐々に変化し、焦点は民営化後の組織のあり方になっていった。

別に私の説明で氏が考えを変えたわけではなかろうが、とにもかくにも私は、おそらく最初に猪瀬直樹氏に「第二東名は必要です!」と言った民間人である。

 

ただ、その設計に関しては、当初の「全線6車線、設計速度120km/h」は贅沢過ぎるだろうと考えていた。もちろんクルマ好き&道路好きとしては、そんなアウトバーンみたいな道路が出来てほしいという思いはあったが、ドラ息子が父親に「スーパーカーを買ってくれ」とねだるような後ろめたさもあった。

アウトバーンのように巨大な風力発電を目指して走ってみたいよね……(写真/Adobe Stock)

よって、民営化委員会が出した「建設続行、ただし6車線を4車線に設計変更し、コストダウンを図る」という結論には、一抹の寂しさを抱きつつ、「よかった……」と胸を撫でおろした。

あの西麻布のインタビューから約10年後の2012年4月。新東名の御殿場JCT-三ケ日JCT間が開通。さっそく走り初めをした私は、「なんだこりゃ!?」と驚愕した。

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WRITER
清水 草一
清水 草一
1962年東京生まれ。慶応義塾大学卒業後、編集者を経てフリーライター。代表作『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高はなぜ渋滞するのか!?』『浜崎橋はなぜ渋滞するのか?』などの著作で首都高研究家・交通ジャーナリストとしても活動中。『週刊SPA!』など連載多数。日本文芸家協会会員。
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