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ワクサカソウヘイの「たてものはいきものだとおもうもの」【14】梵寿綱にペダルを漕げ

ワクサカソウヘイの「たてものはいきものだとおもうもの」【14】梵寿綱にペダルを漕げ

呼吸をしているような建物たちを、静かに興奮しながら鑑賞したい。建築物にまつわるアレコレを文筆家・ワクサカソウヘイが五感で味わい、綴ります。

緊急事態宣言解除後も「コロナ禍」はいまだ継続中。生きるとはなにか。都市で暮らすとはどういうことか。コロナウイルスが問うてきた人間社会の根源的な疑問を解決するため、われわれはいきもののように躍動する建築群を求め奔った……というのは大げさです。かくも奇妙な建築旅、肩の力を抜いてお楽しみあれ。(編集部)

タイトルイラスト/死後くん

 

#14 梵寿綱にペダルを漕げ

 

遠くへと足を延ばす機会が極端に減ってしまった最近、近所をブラブラと散歩することばかりしているわけだが、そこで改めて気づいてしまったのは「住宅街のつまらなさ」である。

なんというか、景色のパターンが乏しい。乏しすぎる。

目に映るマンションやアパート、その押し並べて四角四面な様子は、いったいどうしたことだろう。判で押したように、同じような外壁、同じようなベランダ、同じような窓。どの建物もまったくもって、面白みに欠けている。

散歩から帰ってきて、小さな我が家の外観に目をやれば、それもまた実に月並みな姿で、私は深くため息を吐く。

ああ、もっと常軌を逸した、ふざけた住宅は、どこかにないものか。

そんな愚痴を、本連載の打ち合わせの合間にこぼしていたら、編集担当のSさんがこんなアドバイスをくれた。

「それなら、梵寿綱(ぼんじゅこう)ですよ。梵寿綱の建築を見に行きましょう」

奇怪なワードの登場に、私はたじろいだ。

「え、梵寿綱……?なんですか、それは?」

「建築家の名前ですよ、梵寿綱」

「どっからが名字で、どっからが名前なんですか、それ」

「まあ、名前のことはひとまず置いておいて。彼が設計を手掛けた賃貸アパートや集合住宅は、かなり異色というか、独特の造りになっているんですよ」

「へえ……、どのくらい独特なんですか?」

「アルフィーの高見沢のギターくらい、独特です」

「本当ですか、それは気になる」

「都内の梵寿綱建築を巡礼して、退屈な日常に一泡吹かせてやりましょうよ」

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WRITER
ワクサカソウヘイ
ワクサカソウヘイ
1983年生まれ。文筆業。ルポ、コラム、コント台本などを執筆。主な著書に『夜の墓場で反省会』『ふざける力』『今日もひとり、ディズニーランドで』など。最新刊は『ヤバイ鳥』(エイ出版社)。
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