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宮田珠己の「迷宮は人生のインフラである」【7】飛騨金山で恍惚の「筋骨めぐり」

宮田珠己の「迷宮は人生のインフラである」【7】飛騨金山で恍惚の「筋骨めぐり」

迷路好き悶絶「ハウルの動く城」ゾーン

まずこの「筋骨」、どう見ても私道。舗装すらされていない。

これも「筋骨」

そこへずかずか踏み込んでいく「筋骨案内人」岡戸さん。

さらに、誰がどう見たって個人宅の軒下。こんな場所とてもガイドなしでは通れなかった。

この2階はどうなっているのか。

しかし驚きはまだこんなものではなかった。用水路を跨ぐ橋があり、そこからの眺めは昭和の雰囲気。

用水路と住宅

用水路べりに降りると、そこにも湧き水の水場があり、橋の下を潜って暗い道へ侵入。

その先にもまた水場があったりして、湧き水がやたら多いわけだが、その先に驚異の光景が待っていた。

ハウルの動く城

用水路の上を跨ぐように奇妙な3階建ての家が建っていたのだ。1階は土台の脚の上に木材をかましてその上に載っかっている。それが脚のように見えるのか、地元では「ハウルの動く城」と呼ばれているらしい。

1階と上の階で軸がずれているが、こちらは家の裏にあたり、表はこの2階の高さがに道路が通っている。なので、この1階は表から見れば地下にあたる。

横から見たハウルの動く城

なんて素敵な形。ガキガキした見た目といい、不安定な土台といい、実にインスタ映えする建物ではないか。たとえインスタ映えしなくても、きっとみんな好きだろう。今はもう誰も住んでいないそうだが、そうはいってもBSのパラボラもあるし、わりと最近まで住んでいた気配がある。

そしてこの家だけでなく、それに連なる建物もすごかった。

右手の家は角が用水路の上に張り出している。右の隙間には「筋骨」が通って、上の道路に通じている。

左の家なんて完全に用水路の上。ここに住むのはなかなか勇気がいりそうというか、湿気がすごいのではないか。増水時などは怖いだろう。

「今はもう違法建築になるので、取り壊したらこの形では再建できません」

岡戸さんは言った。

この用水路を跨ぐ家の左に「筋骨」が通っていて、そこをさらに抜けていくと、もうひとつ用水路を跨ぐ家が見えてきた。

「この家は、右が飛騨街道、左が劇場通りに面していて、どっちも表なんです。なので、裏口がここにあります」

と岡戸さんが家の下に潜って指し示したのがここ。

忍者屋敷の脱出口か!

痺れる。なんて素敵なんだ「筋骨めぐり」。

その後も用水路を跨ぐ家は続き、

まっすぐ立って歩けない「筋骨」まで登場。面白すぎて卒倒しそうであった。本当にこれ私道じゃないんだろうか。

驚異のハウルゾーンを抜けたあとは、置き屋だった建物や、造り酒屋などを見学し、いやあお腹いっぱい、岡戸さん今日はどうもありがとうございました、有名観光地ではないだけに、岡戸さんのような地元の人たちの活動がなければ、私が知ることもなかっただろう。出会えてよかった。

そうして最後、駅へ向かうのかと見せて、さらなる魔界へ踏み込んでいく「筋骨案内人」。

こんなにも迷路全開な町だったとは飛騨金山。2時間では到底すべての「筋骨」をめぐることはできない。あらためてじっくり写真でも撮りに来たいと強く思ったのである。

 
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WRITER
宮田 珠己
宮田 珠己
エッセイスト。大阪大学工学部土木工学科卒。一度は就職するものの、独立してフリーランスに。著書に『ニッポン47都道府県正直観光案内』『無脊椎水族館』(ともに本の雑誌社)、『四次元温泉日記』(ちくま文庫)、『東京近郊スペクタクルさんぽ』(新潮社)、『晴れた日は巨大仏を見に』(幻冬舎文庫)、『ジェットコースターにもほどがある』(集英社文庫)ほか多数。2017~18年度朝日新聞書評委員。現在、湘南モノレールWEBサイト「ソラdeブラーン」の編集を担当。
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