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宮田珠己の「迷宮は人生のインフラである」【9】全国屈指の大迷宮「雑賀崎」で迷う

宮田珠己の「迷宮は人生のインフラである」【9】全国屈指の大迷宮「雑賀崎」で迷う

エッセイスト・宮田珠己さんが迷路的なものを求め、文字通りさまよって今回で第9回目。ぜんぶコロナのせいで取材に出られないので、今回は宮田さんの膨大なメモリーから掘り起こされた特別編です。さて、どんな珠玉の迷路が待っているのでしょう……?(編集部)

日本のアマルフィではない、雑賀崎は雑賀崎だ

全国各地の迷路的スポットを紹介し、迷路の底知れぬ魅力を令和の世に問うのが本連載の趣旨である。日本には迷路のような場所がたくさんあり、取材さえできればいくらでも紹介したいのだが、新型コロナの影響で、自分の町から出られなくなってしまった。

そこで今回は、これまで行った場所のなかでもっとも激しい迷路だったと言っても過言ではない、和歌山県雑賀崎の迷路っぷりをふりかえってみたい。

雑賀崎(さいかざき)はその名前からもわかるように戦国時代、石山合戦で織田信長と戦った雑賀衆が城を築いた要害の地である。地図を見ると、小さな湾を抱き込むような形で、半島が海に突き出し、その先端に灯台が立っている。

この小さな湾が雑賀崎の漁港で、漁港に臨む丘の斜面にはたくさんの家が建ち並んで、その様子が、誰が言い出したか、イタリアの名勝アマルフィの街並みに似ているという。一部では「日本のアマルフィ」などと呼ばれているらしい。

アマルフィを知らなかったので検索してみると、石造りの建物が海に面した断崖にへばりつくように並ぶ、迫力のある街だった。建物の明るい彩りが、いかにも地中海といった風情だが、日本のアマルフィはそれほどの断崖でもなく彩りもなく、はっきり言ってたいして似てない。アマルフィのそそり立つ絶壁と、雑賀崎のなだらかな町並みはまったく別のものだ。

むしろ、そんな異名を持たせることによって、派手な景色と比べてしまい、かえってこっちが貧相に見えてしまう可能性がある。それより、雑賀崎は雑賀崎としての魅力を堂々とアピールするべきと私は言いたい。

雑賀崎の魅力とは何か。

それはもちろん、その比類なき迷路っぷりである。

雑賀崎こそは、知る人ぞ知る、日本屈指の迷路の町なのである。

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宮田 珠己
宮田 珠己
エッセイスト。大阪大学工学部土木工学科卒。一度は就職するものの、独立してフリーランスに。著書に『ニッポン47都道府県正直観光案内』『無脊椎水族館』(ともに本の雑誌社)、『四次元温泉日記』(ちくま文庫)、『東京近郊スペクタクルさんぽ』(新潮社)、『晴れた日は巨大仏を見に』(幻冬舎文庫)、『ジェットコースターにもほどがある』(集英社文庫)ほか多数。2017~18年度朝日新聞書評委員。現在、湘南モノレールWEBサイト「ソラdeブラーン」の編集を担当。
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