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宮田珠己の「迷宮は人生のインフラである」【10】多摩ニュータウン遊歩道に極上の迷路を見た【前編】

宮田珠己の「迷宮は人生のインフラである」【10】多摩ニュータウン遊歩道に極上の迷路を見た【前編】

「車道の海」に落ちないように

多摩ニュータウンは、東京都西部の稲城市から多摩市、八王子市、町田市にまたがる東西に長いニュータウンだ。

おおむね京王相模原線に沿って展開しており、駅でいえば若葉台、京王永山(小田急も併設)、京王多摩センター(小田急も併設)、堀の内、南大沢のあたりまでが含まれる。

千里ニュータウンの当初の事業計画面積が1160ヘクタールだったのに対し、多摩ニュータウンは2884ヘクタールの街として構想され、現在はさらに範囲を広げて、その規模は日本最大と言われている。

千里ニュータウンもそうだったが、隣接する地域にも民間によって次々とマンションなどが建設されていくため、実際問題どこまでがニュータウンなのか、年を経るにつれて曖昧になっていくようだ。

それでも中心ははっきりしていて、千里ニュータウンなら千里中央、多摩ニュータウンでは多摩センターがそれである。

この日、多摩センターは暑かった。

べつに多摩センターでなくても暑かったと思うが、とにかく暑かった。

同行してくれることになった編集部のSさんは多摩センターに来るのは初めてだそうだ。東京23区に住んでいたら、多摩ニュータウンに来ることはまずないだろう。それはニュータウンの特性でもある。

ニュータウンには住民以外用事がない。

基本ベッドタウンだからだ。

もちろん、最近はニュータウンに敢えてオフィスを構える企業もあるし、自治体のほうでも文化施設や遊戯施設を誘致して集客を図ったりするので、必ずしも用事がないわけではないが、まああんまり来ないのは確かだろう。

さて地図で予習したところでは、京王多摩センター駅から隣の京王永山駅まで、一度も海に落ちる(車道を通る)ことなくたどりつけるようだ。多摩市が発行しているガイドマップを見ると、たしかに繋がっていた。なので、まずは京王永山駅まで行ってみようと思う。

【遊歩道・多摩よこやまの道ガイドマップ/多摩市ホームページより】

このマップを見て驚いたのは、多摩ニュータウンの遊歩道は全長41キロあると書かれていたことだった。めちゃめちゃ長い。ほぼフルマラソンができる距離だ。

一本道ではないので一筆書きで走ることはできないものの、いくつかのモデルルートが設定され、長いルートは8キロほどあるようだった。どんだけでかいんだ多摩ニュータウン。

このマップを見ればたどるべきルートは誰でもわかるが、今回は自分なりのルールを設けて、それに則って京王永山を目指したい。

何度も言うように、今回の散策では海に落ちない(車道を通らない)ことを絶対の条件とする。

横断歩道も渡らなければ、車道に沿った歩道も通らない。たとえば写真のような場所。

横断歩道

ほんの数メートル車道を横断するだけで対岸の遊歩道に接続できるが、通行不可である。信号機のあるなしは関係ない。なぜなら、ここは海だからである。ここを渡ると、ふとした隙にサメに食われるかもしれない。

また車道と歩道が潅木帯などできっちり区分されていたとしても、車道に沿った歩道は通れないこととする。獰猛なシャチが波打ち際までやってきて陸上のアザラシを襲う動画を見たことがある。たとえ間に潅木があっても油断は禁物だ。

車道沿いの歩道

つまり、交通法規では守られていても、運転側の何らかのミスによって車が突っ込んでくる可能性がある場所はすべて通行不可ということである

事前に調べたところ、京王永山駅まで海に落ちずに行くには、京王多摩センター駅を出てすぐに東に向かわず、しばらく南下してから回り込む必要がある。

なのでわれわれはまず駅から多摩中央公園を目指して歩きはじめた。

 
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宮田 珠己
宮田 珠己
エッセイスト。大阪大学工学部土木工学科卒。一度は就職するものの、独立してフリーランスに。著書に『ニッポン47都道府県正直観光案内』『無脊椎水族館』(ともに本の雑誌社)、『四次元温泉日記』(ちくま文庫)、『東京近郊スペクタクルさんぽ』(新潮社)、『晴れた日は巨大仏を見に』(幻冬舎文庫)、『ジェットコースターにもほどがある』(集英社文庫)ほか多数。2017~18年度朝日新聞書評委員。現在、湘南モノレールWEBサイト「ソラdeブラーン」の編集を担当。
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