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宮田珠己の「迷宮は人生のインフラである」【10】多摩ニュータウン遊歩道に極上の迷路を見た【前編】

宮田珠己の「迷宮は人生のインフラである」【10】多摩ニュータウン遊歩道に極上の迷路を見た【前編】

自然の地形を活かした街並み

多摩中央公園は駅の南に位置し、駅から広いペデストリアンデッキがまっすぐに続いている。ホールなどを擁するパルテノンと呼ばれる文化施設が中央公園の入口にあり、周囲にはショッピングモールや映画館などが集積して、なかなかのにぎわいであった。

多摩センターからパルテノンへ向かう道

左手に伸びるペデストリアンデッキの先にはサンリオピューロランドが見える。

左手奥にサンリオピューロランド

サンリオピューロランドは多地区から多摩センターに人を呼んでくれる集客装置であり、駅周辺にもハローキティのディスプレイがあちこちに散りばめられている。

多摩センター駅のハローキティ

多摩中央公園に入り、そのまま北から南へ縦断した。途中に池と広い芝生の広場があって気持ちがいい。

多摩中央公園

多摩中央公園内の遊歩道

多摩ニュータウンはそこらじゅうに公園があり、遊歩道も公園を繋ぎながら歩いていくような感じである。「どんぐり山公園」の横を通り過ぎて、「さくら通り」と呼ばれる遊歩道を南下。途中「落合けやき通り」という車道を陸橋で越える。

陸橋といってもありがたいことに階段を昇る必要はない。遊歩道と陸橋が同じ高さにあるのだ。歩いてみてわかったのだが、街全体がかなり凸凹していて、車道は低いところを走るように設計されているようだ。一方遊歩道は高いところを通り、車道の谷間を跨ぎこえていく。

これはなかなかいいアイデアだ。車道と歩道を分離するといっても、ふつうの陸橋の場合、人間はわざわざ階段を登るぐらいなら道路を横断してしまおうという誘惑にかられやすく、現実的にはかえって危険である。

車道と歩道を高低差で分離1

車道と歩道を高低差で分離2

その意味では多摩ニュータウンの、街の大半が宙に浮いているような構造は、理想的な土地との出会いによって可能だったと言えるのかもしれない。

多摩ニュータウン構想には当初「自然地形案」というものがあったそうである。

基本構想は昭和38年に第1次案が作成され、その後2年かけて第6次案まで作られ最終決定されたが、このとき第7次案として「自然地形案」が提案された。

それは造成工事をなるべく減らして、自然の地形のままに街を作るというもので、その場合、集合住宅の多くが斜面に建てられる計画だった。最終的にこの案では地形に合わせた多様な住宅を設計する必要が生じ、規格化された集合住宅を大量供給し手間を低減することができないという理由で見送られたという。

しかし出来上がった現在の街も、私から見れば「自然地形」を十分に活かしているように思える。

もともとの地形を知らないが、「自然地形案」通りに地形を残していたら、もっともっとアップダウンの多い街になっていたのだろうか。

 
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WRITER
宮田 珠己
宮田 珠己
エッセイスト。大阪大学工学部土木工学科卒。一度は就職するものの、独立してフリーランスに。著書に『ニッポン47都道府県正直観光案内』『無脊椎水族館』(ともに本の雑誌社)、『四次元温泉日記』(ちくま文庫)、『東京近郊スペクタクルさんぽ』(新潮社)、『晴れた日は巨大仏を見に』(幻冬舎文庫)、『ジェットコースターにもほどがある』(集英社文庫)ほか多数。2017~18年度朝日新聞書評委員。現在、湘南モノレールWEBサイト「ソラdeブラーン」の編集を担当。
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