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Y田Y子の「人はなぜ日本武道館をめざすのか」【8】戦う者に音楽あり!

Y田Y子の「人はなぜ日本武道館をめざすのか」【8】戦う者に音楽あり!

今月の編集後記

みなさまこんにちは。漫画エッセイストのY田Y子です。


『人はなぜ日本武道館をめざすのか』。武道の殿堂でありながら、ビートルズの来日とともに、音楽の殿堂ともなっていった日本武道館――第8話にしていよいよ音楽の殿堂の話に入りました。

そもそもこの建物は、武道を振興するための建物として、東京オリンピックに柔道が公式競技として採用されたのを機につくられたものです。

祖父・山田守も、あくまでも武道競技を行う用途中心に設計したのですが、創立の翌年に、当時の人気指揮者・ストコフスキーによる日本フィルハーモニー交響楽団の演奏会が開かれた時は、「自分が意図した用途ではないけれど、音楽に使われるのもよいものだなぁ」といたく感激し、ストコフスキーと神楽坂で朝まで飲み明かしたそうです。

その時、山田守が描いた色紙

祖父はその1年後、ビートルズが来日する17日前に亡くなってしまったので、「不良バンドに武道の殿堂を使用させるな」などの騒動は知らなかったわけですが、意外にあの場所に音楽が似合うことを体験していたので、この時使用を知ったとしたら、むしろ歓迎したのではないか?  と当時を知る親族が話しているのを私も聞いたことがあります。

さて、ビートルズの成功によって、音楽の聖地と化し、多くのミュージシャンが目指す場所になった日本武道館。都心にあり、屋内会場として最大規模であった時期が長く続いた上、ビートルズの成功が重なって、コンサート会場としても有名になっていったと言われています。

しかし一方で、わたしは長年「では音楽の中でも、どうしてロックがやけに似合うんだろう」と不思議に思っておりました。

そんな長年の疑問に加え、この連載で、武道は“武士道”から来ていることを描いていたので、TV番組『題名のない音楽会』で「日本のバンドは武士が始めた」との説が聞こえてきたときは、思わず椅子から乗り出してしまいました。

平家物語が奏でられるような、元はゆったりとしていた琵琶の音を、バチを大きくし、叩きつけるように弾く奏法を生み出し、〝煽る〟演奏を可能にした薩摩琵琶。それはまさに和風ハードロックで、そのような音楽を好んだ人々が、西洋の吹奏楽を日本に持ち込んだとか……そう言われてみると、西洋の軍隊は軍楽隊を引き連れて戦っているのが常で、精神的に負荷のかかる″戦い”に音楽はとても相性が良いのだと気づきました。今でも自衛隊には立派な楽団が残っていて、人気もあったりしますよね。

そして、対外的に「国家」を示す概念が必要なかった江戸時代が終わり、日本人が西洋人と交流する中で「国歌」の必要を教わり、最初の国歌はイギリス人がつくってくれたということも、サツマバンドを調べていくとわかってきました。このときフェントン氏につくってもらった「君が代」を、より雅楽調にしたのが現在の「君が代」で、かつての曲は、今でも発祥の地の横浜・妙香寺で演奏されているそうです(YouTubeでも聞けます)。

……と見ていくと、イギリス人であるビートルズがバンド演奏したのも、“武道の殿堂”にとって意外と縁が遠くもなかったのかもしれないなと。日本武道館最多公演記録を持つ矢沢永吉さんのファンの方々が旗を掲げて武道館に乗り込んでくる光景は、戦国時代の戦陣のようでもあったりして……“武道の殿堂”が音楽の殿堂(特にロック)と呼ばれるようになったのは、意外と似合っていたのでは? と思い、今回はこの話を描いてみました。

私はこの一年、日本武道館のことを調べたり、関係者の方に話を聞いたりしてきましたが、この建物にまつわる目下の困りごと? は、多くの人が「武道を振興する施設」という本来の意義よりも、「コンサート会場」だと認識していることでした。
そして、コンサート会場だと思い込んでいると、たしかに、なぜみんなが憧れ、目標にするか――その魅力の正体はわからないと気づきました。

「人はなぜ日本武道館をめざすのか」の連載を通して、『それはそこに、日本が長く培ってきた“武道の精神”があるから』という推測をしています。

そして、音楽は、その精神を鼓舞したり、癒したりする力があったから、こんなにもこの場所になじんだのではないか、とこの話を描いて思ったりしています。

*さて、タイトルイラストが“令和バージョン”になりました! 2020年、二度目の東京オリンピックを迎える日本武道館。前回にはなかったのは、女子の柔道と男女の空手競技です。こちらを記念して「女子の空手選手」を描いてみました。(みなさん超素敵なので必見です!)……というか、女子柔道も前回はなかったんですね~(オリンピック正式種目になったのは1992年バルセロナ大会から)。この50年でものすごく変わったのは、女性の社会進出だなぁとしみじみ思ったりしています。

そんな話も最後に描きたいなと考えつつも、あと数回、音楽の話を描いてみたいと思っています。素敵なゲストも登場してくださる予定!! 月一回の更新ですが、月末忘れずにチェックしに来てやってくださいませ。ではまた~!

 

【編集部よりお知らせ】

作者取材により、12月は休載です。次回は1月配信予定です。

 

漫画エッセイスト・Y田Y子の「人はなぜ日本武道館をめざすのか」【公開記事リスト】

第1話 「なんでこんなおもしろい形なの?」

第2話 日本武道館と半世紀~設計者の孫の気づき

第3話 玉ねぎは「武道の心」のシンボル~あの曲線の秘密

第4話 そこに「武道の心」があるから~無敵に至る道

第5話 日本武道館の守護霊?~土地の歴史をたずねて

第6話 改修中! 増築出来!

第7話 日本武道館は大仏殿?

第8話 戦う者に音楽あり!

 
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WRITER
Y田 Y子
Y田 Y子
漫画エッセイスト。漫画をアイキャッチに文章で補足する「漫画エッセイ」のスタイルで活動中。日本武道館等の設計者で祖父・山田守の生涯を取材し漫画化、『50年めの大きな玉ねぎ』(yy50tama.com)にて配信中。趣味はアマチュア講談、ゆるキャラ創作、お風呂めぐり。
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