家入龍太のやさしい建設ICT講座【05】あえて言おう! 建設ICT普及を阻む“7つの要因”【後編】

前編では、次の3つのICTを阻む要因を取り上げました。
1 現場の職人のレベルが高すぎる問題
2 組織上層部のICTへの理解がない問題
3 組織内でICTの導入目的を見失う問題
ひきつづき後編でも、その要因を探っていきましょう。
4 お役所の仕事が非効率すぎた問題
いわずとしれた“お役所仕事”ですね。およそ20年前、国土交通省が「CALS/EC(公共事業支援統合情報システム、Continuous Acquisition and Life-cycle Support / Electronic Commerce)」をはじめました。
それは「現場写真をデジタルカメラで撮影」「図面をCAD化する」とか、それから電子入札や電子納品を導入・実施する――などでした。おかげでデジカメが売れたりCADを使う人が増えたり、パソコンも現場に1台あるかないかだったのが、全員に支給され、事務所にLANを引いてネットも繋ぐのも当たり前になりました。
それらを半強制的に導入させた功績は大きかったんだけれど、施策としては単に紙を電子に置き換えただけ。結局、人間が目で見ないといけないことに変わりはなく、単なるペーパーレス化に過ぎないものでした。これはコンピューターの使い方を完全に間違っていた。
それがいま、i-Constructionの時代になって、驚くほどにガラッと変わったと思います。かえって役所がリードしはじめた。毎年、i-Construction関係の基準が発表されますが、半年前に発表されたばかりの最新技術をキャッチアップしているぐらい、国交省がどんどん時代の先へ進んでいるかのような印象です。民間が追いつくのに必死な感があるぐらい!
なおかつ国交省は、“生産性”という言葉を発するようになった。それは受注者側のビジネスも踏まえてくれている証。だからいまのi-Constructionの無人化工法も民間受注者が積極的に取り組んでいるし、i-Constructionの対応工事も手挙げ方式にしているので、「やります!」と積極的に手を挙げる会社が増えている。役所の心構え、ICTの取り組み次第で、ガラッと普及度合いが変わると感じています。
国はそんな先進的な動きですが、地方自治体はまだまだこれから。ただし、地方自治体の中でも一部、先進的なICT化に積極的に取り組んでいる静岡県のような例もある。ともあれ、発注者の意識が変われば、ICT化はかなり変わるんじゃないでしょうか。

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