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家入龍太のやさしい建設ICT講座【09】緊急指令!名建築をICT技術で保存せよ【前編】

家入龍太のやさしい建設ICT講座【09】緊急指令!名建築をICT技術で保存せよ【前編】

「モノからコトへ」にマッチするICT技術

――名建築の3Dデータ保存は、現状においてベストな解決策なんでしょうか。

家入 そうですねえ。いまは「モノ消費」から「コト消費」の時代になっていると言われています。実物を残すのは老朽化に伴う安全管理面のリスクもあるので、その意味では点群データ+VRなら、老朽化とは無縁なのでどこでも入れます。思い出を持続可能にできるという意味では、コト消費時代に点群データ化は向いているのでは、と思います。

――たしかに、地方に朽ちゆくまま残しておくより、都心でVR化した方が、建物の良さを多くの人に知ってもらえる分だけ価値のあることなのかもしれませんね。

家入 ええ。似たようなもので言えば昨年夏、「建築の葬式」と題し、日本大学理学部五号館の校舎の記憶を残すイベントが行われました。同じ校舎で学んだ人は何十年分もいるので、年齢が違う卒業生たちが「僕はこの校舎でこんな思い出があったんだぞ」みたいなメモを付けられるようにした。取り壊した後もその場でスマホをかざすと、思い出のコメントが見られるように……。時空を問わずにアクセスできるのがバーチャルならではのコミュニケーションかなと。

――そうですね。いま都心ですさまじい勢いで再開発が進んでいますが、名建築ではないけれど「看板建築」なんかも都内でどんどんなくなっている。個人の所有する店舗や住宅は、財力に余裕があるわけでもなく、データが保存されるのは難しいですよね。ああいうものこそ3Dデータを活用して残していく必要があるような……。

家入 ええ、私もそう思いますね。ちょうど最近、カサノバエンタープライズが360°カメラでコマ撮りをして、それを基に3Dモデルをつくるサービス「PanoWeave(パノウィーブ)」をはじめました。家に入った時のぬくもりや記憶がよみがえってくるんです。しかも低コストで。写真撮影の延長上で、こんな形で残しておくこともできるんじゃないかな。

――それはいい!

家入 街並みに関しては、1960年代の渋谷をフォトグラメトリ、要するに当時のいろいろな角度から撮った白黒写真をたくさん市民から集めて、いまのドローン測量と同じ要領で3Dモデルにしようという「1964 TOKYO VR」があります。

――コレですね。

家入 それです。昔のかまぼこ型の東横線のホームなどの雰囲気がよく分かりますね。ただ写真がないところは……ある年代の街並みを残すという、ちょっと大規模なモデリングという意味では、部分的にはうまくいっているかな。似たものとしてGoogle Earthがありますね。

――Google Earthには東日本大震災の被災前のストリートビューも見られる特設サイト「未来へのキオク」がありますね。

家入 そうですね。最近、Google Earthの都市の3Dモデルのクオリティがめちゃめちゃ上がっている。工事中のクレーンでさえも立体になっているというレベルです。地上から撮った写真や空撮写真などを駆使して、ほぼ自動モデリングしているんでしょうね。

――ARナビゲーションは、名前まで出るのですね、建物とか、通りの名前まで。

家入 下手したら、Google Earthがデジタルアーカイブとして最適かもしれない。

――さすがはGoogle先生。もはやこの分野では独壇場ですか。

家入 マイクロソフトも「バーチャルアース」というのをやっていたんです。いまはどうなってるのか……。結構いい感じの3Dモデルでしたけれど。

さっきの1960年の渋谷の街並みも、60年代当時にGoogle Earthがあれば、まったく問題なくできる。今のGoogle Earthデータも年代ごとに蓄積しているでしょうから、ビルが建て替わってきた様子が時系列で分かるようになるのかなと。

――本当にGoogle様様です。

家入 それに見合ったお金が入ってくるのか、もうかっているのか、ちょっと分かんないですが……(苦笑)。

 

 
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家入 龍太
家入 龍太
BIMや3次元CAD、情報化施工などの導入により、生産性向上、地球環境保全、国際化といった建設業が抱える経営課題を解決するための情報を「一歩先の視点」で発信し続ける建設ITジャーナリスト。代案や新しいことへのチャレンジを「ほめて伸ばす」のがモットー。日経BP社出身。講演回数は90回以上。資格は中小企業診断士、1級土木施工管理技士など。
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