家入龍太のやさしい建設ICT講座【02】ドローンやロボットは建設現場に何をもたらすか【前編】

ドローンは建設現場でどのような役に立っているか
前回も書きましたが、「建設ICT」が示す範囲はBIMのような3次元データだけではありません。情報をペーパーレス化、省力化、効率化を目的にデジタル化するのはすべてICT化です。国土交通省も「i-Construction」を「○○こそが建設ICTだ、それ以外は違う」と定義しているわけではなく、幅広く建設をデジタル化して、コンピューターにできることはコンピューターにやらせて、とにかく無駄を省いていこうと考えています。
私の勝手な解釈では、「i-Construction」の「i」はICTの「i」であり、建設業界に対する「愛」であり、i-Conを推進する石井国土交通大臣の「i」だともささやかれていますし、私(家入)の「i」も(笑)。みんなの“アイ”が込められた意味の広い内容なのです。
今回はその中で、注目されている技術をいくつかご紹介しましょう。
まずはドローンです。建設現場では進捗状況を定期的に撮影する業務が発生します。これまでは隣にマンションがあれば登らせてもらって撮ったり、倉庫の屋根に登らせてもらって撮ったりしていましたが、そうそううまく隣にマンションがあるわけでもない。そこにドローンがあれば、定点撮影が常に簡単に、しかも自分の敷地内でできるようになります。
それから、3次元モデルをつくるための撮影。これは横方向に8割、縦方向に6割重ねながら少しずつずらして位置を変えつつ、大部分を重ねながら連続撮影をしていきます。
撮影枚数は数百枚、場合によっては千枚以上です。その撮影データをワークステーションという高性能のパソコンに入れて、4~5時間計算すると、数値モデルができる。従来の写真測量と言われていたことを、同じような原理でパソコンの中で作業しています。
ドローン導入のメリットは人件費削減にあり
ドローンの導入によって、どんなメリットがあるか。なんといってもコスト削減でしょう。これまでの測量は、「点」と「線」の無数の組み合わせによって「面」を計測する仕組みで、人手は必要ですし、計測だけでも相当の日数がかかります。
それに比べてドローンならば、15分も飛ばしておけばじゅうぶんに面を網羅できて、後工程もパソコンに任せて待っているだけ。ドローンを飛ばすのを専門家に頼めば、1日30万円程度の費用はかかりますが、それでも人件費は圧倒的に安く抑えられるはず。
200万円近い高性能ドローンと専門技術者をセットでレンタル派遣してもらうような方法もありますが、いまは誰でもドローン自体を購入できる時代。4~5年前に3次元モデルの製作に堪えるレベルのドローン用高精度ジンバル(機体が揺れてもカメラを一定方向に保つ機能)ができたおかげで、たとえば大手家電量販店でも扱っているDJI社のドローン“ファントム”ならば、精度はそこまで高くないけれど実用に耐えるレベルの3次元モデルも一応つくれるようになりました。
いまは20万円ぐらいのファントムを経費で購入して、新しい機械が得意な社員や好きな社員が飛ばしている企業もあります。

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