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【図面まみれの展覧会開催中】建築家・安藤忠雄はなぜ「世界のANDO」と呼ばれるのか?

【図面まみれの展覧会開催中】建築家・安藤忠雄はなぜ「世界のANDO」と呼ばれるのか?

国内外から注目を浴びつづける建築家「世界のANDO」こと安藤忠雄。今回は安藤忠雄氏の代表作をご紹介しながら、彼がなぜ名建築家と言われるのか、その理由を探っていこう。

安藤忠雄とは

安藤忠雄氏(あんどう・ただお)は1941年9月13日生まれ。この9月に78歳になる。

建築にそれほど関心がない一般市民にさえも知られているほど著名な安藤氏だが、彼は高校卒業後、プロボクサー経験して、独学で建築を学んだというのだから驚きである。

1969年に大阪で安藤忠雄建築研究所を設立し、彼の建築家人生は幕を開けた。最初に請け負った仕事「富島邸」が事務所の方向性を決め、のちに「住吉の長屋」「光の教会」「地中美術館」などの代表作を生み出すこととなる。

当初は厳しく批評されることもあったものの、いまでは「世界のANDO」と称され、国内外から高く評価されている。1997年には東京大学教授にも就任した(現・名誉教授)。

過去に胆のう、胆管、十二指腸、すい臓、脾臓の5つの臓器を全摘出したが、「健康上の問題はない、まだ建築家としてやっていくつもりだ」と語る安藤。彼の建築家人生はまだまだ続いてゆくのだ。

安藤忠雄氏の代表作品の図面が見られる⁉

さて、そんな安藤氏の1990年ごろまでの手描きの設計原図を展示した「安藤忠雄初期建築原図展 個の自立と対話」が開催中だ。

初期の作品は国内での案件が主であり、かつ住宅など小規模な建築が多い。そんな作品群の貴重な図面が見られるのだ!

住吉の長屋(1976年)

写真/PIXTA

1976年2月に竣工した「住吉の長屋」は、大阪の下町の老朽化した長屋の真ん中を削り取って、コンクリート打ちっ放しの住宅に改築したもの。間口2間、奥行き8間と狭くて細長い敷地、さらに長屋の真ん中を改築するとは……考えただけでもゾッとする。

最終的に「住吉の長屋」は、建物の内外ともにコンクリート打ちっ放し、入口以外に開口部がなく、住宅の真ん中には屋根のない中庭が備えられた。

「家の中で移動するのに中庭を通る必要があるため住みにくい家だ」との見方はあったものの、「自己主張する建築」という高評価を受け、1979年に日本建築学会賞を受賞。安藤氏は住吉の長屋を「住みにくい」と言いながら、「『自然と共に生きる』という、住まいの原点を表した」と語った。

たしかに、長屋の真ん中部分に人目にはつかない中庭を設けることで、心地よい光や風といった自然の優しさ、時には強い雨風など、自然の厳しさを生活の中で感じ取れるのだろう。

光の教会(1989年)

写真/PIXTA

住宅地の一角にある小さな敷地に建てられた「光の教会」は、日本基督教団茨木春日丘教会の礼拝堂として1989年に竣工したものだ。

少ない予算、狭い敷地という条件のもと、祈りの場に相応しい空間をつくるにはどうしたらいいのか――? 試行錯誤した結果、安藤氏は礼拝堂の壁に十字型のスリットをうがち、内部に光の十字架を浮かび上がらせることで、祈りの場をつくり出したのだ。

椅子と説教壇だけが置かれた緊張感のある空間は、壁のスリットから差し込む光の十字架で、見事な祈りの空間へと変容している。

水の教会(1988)

写真/PIXTA

北海道占冠村の大自然のなか、巨大な人工池に面した2つのコンクリートボックスが存在感を醸し出す。星野リゾート トマム内にある水の教会は自然と一体化し、神秘的な空間を感じ取ることができる。

安藤氏は水の教会について、「この教会では、人間が五感のすべてを通じて建築と自然を感じ取ることを目的としている」と語った。

住吉の長屋と同様、住まいの原点を自然と共に生きることと捉えている安藤氏。だから、どの建築も自然が背景に描かれているのだ。

ANDOの飽くなき挑戦は続く

安藤忠雄初期建築原図展 個の自立と対話」では、平日にもかかわらず、昼下がりの会場には30名ほどのギャラリーが熱心に展示物に見入っていた。

展示されている模型の数々(写真/編集部)

数多く展示で平面図に断面図・透視図・アクソノメトリック図などを重ね合わせた3次元的な図面は、すべて手書きで描かれたもの。「1枚の図面に設計者の意思を凝縮させたい」という安藤氏の想いが詰まった図面を見れば、建築の専門的知識がなくても、その精緻さと美しさに驚かされ、そして心をゆさぶられるはずだ。

いまやコンピューターで描くことができる図面を、手書きで描くということ。「前時代的だなあ」と思うのか。「こんな美しいものを人間は描けるのか!」と驚嘆するのか――。9月23日までに、ぜひあなたの眼で確かめていただきたい。

 

さて、建築家・安藤忠雄が活躍する場は国内に留まらない。高齢になったいまでも現場を駆け回り、現在では中国のプロジェクトに携わる。それ以外にも数多くのプロジェクトが進行し、安藤氏らしい建築を世に送り出す。そんな彼の挑戦は一体いつまで続くのだろうか?

安藤氏はとあるインタビューで、「りんごはいつまでも青くなければならない。私はいつまでも成熟しないでいたい」と語った。世界のANDOは現状に満足せず挑戦を続ける。りんごは、いつまでも青くなければいけないのだから。

 

安藤忠雄初期建築原図展 個の自立と対話

開催場所 東京都文京区湯島4-6-15 国立近現代建築資料館

会期 2019年9月23日(祝)まで、会期中無休

開館時間 午前10時~16時30分

入場無料

WRITER
「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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