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ワザ・モノ

⽇本武道館をアップデートせよ2――⽵中⼯務店の挑戦【前編】

⽇本武道館をアップデートせよ2――⽵中⼯務店の挑戦【前編】

つくる人のことを考えた現場づくり

瀧澤さんが工事⻑として着任し、まずおこなったのは、現場事務所の設置だった。

建設中の中道場棟。右手建物が現場事務所(写真/山田新治郎)

「本当はあの⼟地(※写真右奥、中道場棟の裏)、もともと使⽤する予定じゃなかったんですよ」

現場事務所はもともと、⽇本武道館の敷地内に建設予定だった。しかし瀧澤さんは「どうにか他の場所を借りれないか」と⽇本武道館側に相談。すると、国有地である北の丸公園に国有財産使⽤許可書を出せば、少し⼟地を広げて借りられるかもしれないと判明した。それをなんとか実現すべく、3か⽉ほど費やして事務所⽤地を確保したそうだ。

事務所⽤地確保に3か⽉である。さっさと決めて早く⼯事を進めればいいのではあるまいか。なぜ、そこまでして……︖

彼はこともなげに⾔った。

「スムーズな動線が確保できるからです。事務所を他のエリアにすると、工事車両動線上に設置せざるを得なくなり、⼯事が⼤変になると思ったので。そういうことを最初にやっておかないと、厳しい条件で⼯事をやらなきゃいけない。現場で⼀番重要な動線が確保できてなかったと思うんですよね」

写真/山田新治郎

彼は分かっている。制約条件などから現場事務所の場所を受け⾝で決めると動線がタイトになり、あとから現場にやってくる⼈間が「……ここの現場、なんだか働きづらいよな」とストレスを感じ、その蓄積が現場の効率やモチベ―ションをじわじわと下げていくことを。それを解消するためなら、⾯倒な書類申請や交渉など苦ではない。プロの施⼯管理の仕事だ。

「担当レベルの⼈間がすべて諸条件が決まった段階で現場に来ても、厳しい条件がある中でやらざるをえない。⾃分のような次席(副所⻑)の⽴場の⼈間が、厳しい条件を緩和し現場を良くしてあげることはすごく重要だと思っています」

そういって⾒せてくれたのは、「⼯程表のつくり⽅」の資料だった。⽵中⼯務店ほどの規模の会社であっても、使⽤するソフトは同じだが「どう書くのか」は個々に依るそう。

彼はこれまでの経験をできるだけ整理・体系化し、「厳しい条件をクリアにすることを⼼がけろ」「⼯程表をつくるためにどういった情報を得るべきか」などを所員に共有している。

「段取り8分」の⾔葉どおり、瀧澤さんは段取りを⾮常に重視する。

「この⼯期で新築ならばふつうはタクト⼯程で進めますが、今回の⼯程は全フロア⼀気に施⼯するやり⽅でした。いかに動線を確保するか、搬出⼊をどうするかがポイントだと思ったので、⾼層ビルの施⼯でよく採用する搬出⼊コントロールの揚重センターを導⼊しました。この規模だとあまり導⼊しないのですが、⾃分は採用する必要があると思ったので」

施工中の風景(写真/山田新治郎)

瀧澤さんは総合⼯程表をつくる際、できるだけそれをブレイクダウンして各部の班⻑に伝える。こうして優先順位や順番を⾒誤らないように、最後に突貫⼯事とならないように。

施⼯管理は⼯程が命。だから周囲や部下にもそこを厳しく細かく詰めて徹底させているのかというと――。そこは意外にも「70%の3回転」理論を唱える。

「『100%でやれ』って⾔われると、⼈間、ちょっとキツイんですよ。だから『70%でやろう』と。70%のデキでも3回繰り返せば、100%に近くなる。このぐらいを⽬標に⾏こう、と伝えています。

『それぐらいで1回、報告に来なよ』としておけば、部下も少し気が楽になるじゃないですか。⼯程表を100%のデキで⾒せなきゃ』と気負わせてしまうと、なかなかアウトプットできなくなってくるので」

写真/山田新治郎

後輩に厳しい部下にも「70点できたらOKにしなよ。もう1回、繰り返させればいいじゃない」とやんわりたしなめる。「それぐらいの気持ちでいれば、⾃分もストレスを少しは感じなくなるかもしれないでしょう」と微笑む瀧澤さん。

追い詰められた⼼はミスを招く。時間がないときほど、⼯程は細かく、気持ちは⼤きく――。

 
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「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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