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⽇本武道館をアップデートせよ 2 ――⽵中⼯務店の挑戦【後編】

⽇本武道館をアップデートせよ 2 ――⽵中⼯務店の挑戦【後編】

議論あれど、想いはひとつ

キモは空調である。50年前では考えられないぐらいに⾼温多湿化した⽇本で、最新のエアコンは不可⽋。しかし竣⼯当時はエアコン設置が前提になく、いくどかに渡る⼯事でバラバラな形式でもって増設されてきた。

今回、⻄出さんは現代⽇本の気候に対応できるよう、最新の空調機器ですっきり納めたいと考えた。すると今度は56年前の躯体がネックになる。むりやり今ある場所に納めようとしても納まりきらず、天井の位置を下げることになり、部屋が狭くなる。

写真/山田新治郎

【設計編】をお読みいただいた⽅にはお分かりのように、相⼿はこだわりの強い意匠担当・植松千明さん。「それだとちょっと意図が違うので」という彼⼥と何度もラリーし合ったそうだ。それに加えて建築主である⽇本武道館からの要望も――。

日本武道館をアップデートせよ―山田守建築事務所の挑戦【後編】

「デザインを考えながら⼯夫してうまく収めるのが、今回⼀番⼤変だったかなぁ」

当初、全⾯建て替え案があったことは【設計編】で述べた。設備施⼯担当としても、ゼロベースでやった⽅がはるかに⾃由度が⾼くてラクだっただろう。しかし⻄出さんはそれを否定する。

「『壊して新築したほうがいいんじゃない︖』という考え⽅もあるんでしょうけれどね。でも私は、何⼗年か前にこの会社に⼊社するときから、⽵中⼯務店のなかでこの⽇本武道館が『当社がつくったメジャーな建物』だと思っていました。だからこの建物を改修できたのは、なんだか縁を感じるし、思い⼊れも深い」

写真/山田新治郎

⻄出さんは今回、若⼿社員ふたりと中道場棟の新築から本館改修まで携わって、思うところがあるそうだ。

「われわれゼネコンは、施⼯したものを1年後や2年後、さらには10年後もちゃんと使っていただけるようお客さんにアドバイスするのも仕事のひとつです。ときには設計事務所にも『なぜそれをやるのか。これじゃ1年後に不具合が起きてしまう』などと⾔うべきところは⾔う責任があると思う。

『図⾯どおりにやります』『設計図のとおりに⾊を決めました』じゃなくて、⾊をひとつ付け加える提案をするとか、そういうことをジャッジしたり提案したりできる担当者になってほしいなと思いますね、若い⼈たちには」

ちなみに、今回「⻄出さんにもぜひインタビューを」と推薦したのは、さんざんやりあったであろう、当の⼭⽥守建築事務所の植松さんである。

写真/山田新治郎

次の改修までの20年後や30年後、また⽵中が関われるかどうかではありますけれど、としながら⻄出さんは照れ臭そうに⾔った。

「⾃分のやり⽅を仕事のなかで教えられたかなぁとは思うんです。今回の⼯事で図⾯をCAD化して残せました。それをうまく活⽤できれば、次は今回みたいな苦労はしなくても済むかなと。まあ、また時代の流れによって、やり⽅も違ってくるでしょうしその都度⼤変なこともあるんでしょうけれど、うまくやり⽅を伝承してくれるんじゃないかなと思っています」

  

話を聞きながら、ふと「想いをかたちに 未来へつなぐ」という⽵中⼯務店が掲げるメッセージを思い出した。想い、か――。

 
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「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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