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⽇本武道館をアップデートせよ 2 ――⽵中⼯務店の挑戦【後編】

⽇本武道館をアップデートせよ 2 ――⽵中⼯務店の挑戦【後編】

コロナ禍に負けない⼯程

設備担当の⻄出さんは図⾯で苦労したと主張していた。なるほど。建築計画を取り仕切った瀧澤さんがもっとも苦労したのは、やはりオリンピックに間に合わせるタイトな⼯期だったんでしょう、と尋ねた。

すると「うーん……。やはり施⼯図⾯ですねぇ」。

……えっ、⼯期は⼼配じゃなかったというの︖

「やはり施⼯図⾯ですねぇ」

なにしろ、新国⽴競技場をはじめとした東京2020オリンピック会場は、ほぼ2019年のうちに⼯事を終わらせている。それからオリンピック向けの準備を約半年かけておこなっている。

そんななか、⽇本武道館は着⼯も完成もタイミングがもっとも遅い。当初の予定では2020年6⽉末竣⼯。⽇本武道館での競技実施は7⽉24⽇。かつての東京1964オリンピックの8⽉15⽇竣⼯→10⽉15⽇競技実施よりタイトな⽇程である。⼯事終了と同時、いや並⾏するぐらいのタイミングでオリンピック準備をはじめなければとても間に合わない。

そこへ襲いかかったのが、新型コロナウイルスである。感染拡⼤に伴い、IOC(国際オリンピック協会)は2020年3⽉30⽇に2021年夏への延期を発表。そして4⽉16⽇、政府による緊急事態宣⾔が発出された――。

この当時、建設現場のコロナ感染者が各現場で確認され、⼤⼿ゼネコンは⼯事の⼀時中⽌を決断した。

そんななか、瀧澤さんらは……︖

「4⽉に緊急事態宣⾔が出てから調整しました。もともとは⼟⽇もぜんぶ稼働する予定だったのを、4⽉は⼟⽇すべて休みにしたし、ゴールデンウイークも11連休にしました。他社が現場閉鎖する話が出てきたときには、やはり不安にもなりましたよ」

感染症対策が施された現場事務所内(写真/山田新治郎)

緊急事態宣⾔発出時、現場では350⼈の職⼈さんがいた。

「『本当は出たくないけれど、出させられているんだ」という職⼈の声もちょっとあがっていたので、『無理に来たくないメンバーはもう休んでほしい』と」

そうは⾔いつつも「引き続き働きたい」という職⼈さんもいたため、結局は150⼈ぐらいになったという。

写真/山田新治郎

繰り返すが、当初の⽬標は東京2020オリンピックに間に合わせること。ゴールが遠のいてしまった以上、不透明な状況下でリスクを負ってまで⼯事を進める必要はない。「引き渡しを6⽉末から7⽉末へ1か⽉、延ばしてもらいました。ストップが決まったタイミングで、⼿がついていない箇所もあったので、そこは⼯事を⽌めました」

イレギュラー要因もあって、やはり⼯期の件は⼤変だったのでは。東京2020オリンピック延期の報には正直ホッとしたのでは……︖ しつこく聞いても、瀧澤さんは表情を変えず、きっぱりと⾔う。

「ホッとした……というのとはちょっと違いますね。それを⽬標にやってきたので、むしろ拍⼦抜けという感じ。厳しいミッションだったけれど、それが達成できるところまでほぼほぼ⾒えていましたから。

実は6⽉末引き渡しといいながら、5⽉中頃にはおおかた終わらせようと進めていたんです。『オリンピックの準備⼯事が⼤変そうだな。工夫を凝らして、ちょっとでも早く終わらせてやろう』と思っていた」

実は⼯事完了後の試運転や諸官庁の検査中に、同時並⾏でオリンピック準備のための⼯事を進められるようにと、彼はオリンピック組織委員会と打ち合わせをしていたそうだ。

「本当は今年オリンピックをやってもらったほうが、現場が『こんなにタイトな⼯事だったのに、おれたちうまくやったんだな』という達成感が、もっと湧いたと思うんですよね」

写真提供/山田守建築事務所

瀧澤さんいわく、タイトな⼯程にもいろいろあって、予定外にタイトになれば、いわゆる突貫⼯事をおこなう必要が出てくる。

しかし最初から「こういうタイトな現場だけれど、みんなで頑張ろうぜ」と段取りすれば、みんなが「そうだね、頑張ろう」と同じ⽅向に向かって⾛れるのだとか。

「計画どおりタイトなのか、予定外にタイトになるのかは違うんですよね」。瀧澤さんはさらっと⾔ってのけた。⽇本武道館改修⼯事は計画どおりのタイトさだったというのか……。おそろしい⼈!

 
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「建設の匠」編集部
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「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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