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ワザ・モノ

Dr.八馬のデザイン・コンシャスなドボクたち【1】匠のワザを感じるデザイン橋10選

Dr.八馬のデザイン・コンシャスなドボクたち【1】匠のワザを感じるデザイン橋10選

土木はカッコいい。誰がなんと言おうと、カッコいいのである。

しかし土木は「縁の下の力持ち」という日陰なイメージが先行していたり、肝心の専門家からも難解な技術論の発信が中心であまりデザインについて言及されなかったりする。そこで、土木構造物をデザインの観点から好き勝手に語らいつつ、正々堂々「土木はカッコいいんやぁぁ!」と世界の片隅で愛をさけぶのがこの企画です。

ご指南いただくのは千葉工業大学創造工学部 デザイン科教授・八馬 智センセイ。“都市鑑賞者”を名乗り、最近「ゲームさんぽ」でも話題になった御仁です。この企画では大学教員であることを忘れ、熱量ダダ漏れで語っていただきます。

千葉工業大学創造工学部 デザイン科教授の八馬センセイ。実は建設コンサルタント勤務経験あり

コロナ・ショックで外出もままならない大変な世の中ですが、こんなときこそ、いつかカッコよすぎる土木を訪ねることを夢見ようじゃありませんか……。Dr.八馬によるデザイン・コンシャスなドボクツアー(略してDDD)へいざ参らん!

(以下写真は八馬センセイ撮影) 

 

世界でいちばんの愛され橋

――というわけで、よろしくお願いいたします。この企画では八馬センセイの熱量にしたがって好きに語ってくださいませ。さて、今回のテーマはなににしましょう。

八馬 そうですねぇ。ぼくがずっと見たかった橋が3つあるんです。それは技術的にも匠の域に達していて……。

――いいですね。では「いつか見に行きたい橋」「これまで見たすごい橋」などを織り混ぜて、今回は「匠の技術が光るデザインコンシャスな橋」を10コ選んでくだされば。

八馬 分かりました。では、まずはこれでしょう。ロベール・マイヤールという人が設計したザルギナトーベル橋(スイス)です。

ザルギナトーベル橋

ザルギナトーベル橋

――ふおお、さっそくカッコいいいい(語彙力)。

八馬 カッコいいんですよぉ……1930年にできた橋です。

――1930年というと……昭和5年。日本では満州事変の前年か……

八馬 そう。RC(鉄筋コンクリート)橋のお手本です。マイヤールが活躍する前は石橋の延長線上で、コンクリート技術がまだ確立してなかったんですね。ザルギナトーベル橋によって、「こうやればコンクリートの橋ができるんだ」となった。

――これはコンクリート橋のパイオニアなんですね。

八馬 石橋の場合、「スパンドレル」が埋まっている状態がデフォルトなんですけれど、コンクリートでつくると、そこにクラック(亀裂)が入るなどの不要な応力が発生する問題がありました。この橋はここを空けちゃったっていうのがもう、画期的。ちなみに古い橋ゆえ、コンクリートが劣化しないように表面を塗装しています。

――スゴい。

ザルギナトーベル橋

ザルギナトーベル橋

八馬 この橋、めちゃめちゃ山奥にあるんですよ。

――本当だ。

ザルギナトーベル橋の場所

八馬 ここに行くまでホントに大変なんですけれど、橋梁技術者はここは聖地巡礼のルートのひとつにしてます。

――世界のトップとして君臨するにふさわしい橋。

八馬 もう絶対王者ですね! アルプスで谷をつなぐことはすごく重要な価値がある。それを橋梁技術で乗り越えたから、地元の人に愛されている橋でもある。

ザルギナトーベル橋を見る人々

八馬 いろいろなところに橋を見る場所が設定されていて、ぼくが現地に行ったときもいろんな人たちが来ては「なにしに来た?」と声をかけてくるんです。で「マイヤール、すげえだろ」みたいな自慢をはじめるんですよ。一般の人が橋梁エンジニアの名前を知っているって、すごいことですよ。

――日本では……みんな知らないですよね?

八馬 それはなかなかないと思います。建築家の名前は出ても、エンジニアの名前は出ない。これがスイスの文化という気がする。そうそう、図面が橋のたもとに飾られているんです。

ザルギナトーベル橋

ザルギナトーベル橋

八馬 図面を一般の人に見せるのも、スゴイ話。しかも橋梁の図面じゃなくて支保工の図面ですからね。橋をつくるための土台の図面ですよ。

――橋が見えるところにわざわざ飾っているのがイイです。愛され橋。

八馬 そう、とても愛されている橋なんです。……このペースだと終わらないな(笑)、次に行きましょう。

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WRITER
八馬智
八馬智
1969年千葉県生まれ。千葉工業大学創造工学部デザイン科学科教授。専門は景観デザインや産業観光など。千葉大学にて工業デザインを学ぶ過程で土木構造物の魅力に目覚め、札幌の建設コンサルタントに入社。設計業務を通じて土木業界にデザインの価値を埋め込もうと奮闘したものの、2004年に千葉大学に戻りデザインの教育研究に方向転換した。その後、社会や地域の日常を寡黙に支えている「ドボク」への愛をいっそうこじらせた。2012年に千葉工業大学に移り、現在は本職の傍らで都市鑑賞者として活動しながら、さまざまな形で土木のプロモーションを行っている。著書に『ヨーロッパのドボクを見に行こう』(自由国民社、2015)がある。
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