建設の匠
メニュー
メニュー閉じる
ワザ・モノ

佐藤工業のトンネル技術も活かされた⁉ 高速道路が貫通する「ゲートタワービル」建築施工秘話

佐藤工業のトンネル技術も活かされた⁉ 高速道路が貫通する「ゲートタワービル」建築施工秘話

高速道路がビルを貫いているのか、いや、ビルが高速道路をくるんでしまったのか――。

大阪市福島区にあるTKPゲートタワービル(以下、ゲートタワービル)の話だ。

世界的にも注目の的である同ビル。下の動画で「ハイウェイがビルを貫通している!なんてCool!」と興奮気味に動画でレポートされているぐらいメジャーな建築なのである。

この世界的にも珍しいビルはどのようにしてつくられたのか。独特な形状を施工する際にはさぞかし苦労があったはず……。

編集部は、施工に携わった佐藤工業大阪支店に突撃取材。当時の担当者で現在は安全環境室副室長の渡邊信夫さんに話を聞くことができた。渡邊さんは“トンネルの佐藤”として名の知れた同社において、建築一筋だった人物だ。

当時は入社15年目、主任として施工現場に立った渡邊信夫さん

さらに! このビルの建築主である末澤産業のご厚意により、竣工時につくられた建築模型の撮影に成功。この模型の写真を見ながら、渡邊さんとの対話を進めていこう。

末澤産業のオフィスに鎮座する1/200スケールの建築模型

驚異の施工は両社協力のたまもの

ゲートタワービルは、1989年10月から1992年2月までおよそ28か月をかけて建設された。渡邊さんは10人ほどのチームの中で、所長や副所長の下、仮設やビル工事計画や品質管理などを中心に取り組んでいた。もともとは図面を描いていたけれど現場に引っ張り出されたそう。

そもそも、ゲートタワービルはなぜこんなカタチをしているのか。それは土地所有者である末澤産業と、そこに高速道路をつくりたい阪神高速道路公団の交渉の結果である。

「伊丹空港から梅田につながる阪神高速池田線が非常に混雑していたこと、かつ道路近くに位置する梅田に降りる出口をつくりたかったこと。それらによって出入口建設の話がスタートしたようです。

高速道路をつくるには用地買収してから建てるのが通常の流れなんですけれど、末澤産業さんも土地を売却したくはなかったみたいで、そこでちょうど立ち上がった『立体道路制度』にのっとった計画が進んだのです」と渡邊さんは語る。

「立体道路制度」は道路の上空だけを借りうけ、占有したスペースを建物などに利用する制度。バブル期の土地代高騰により用地取得が難航する中で、1989年に成立した。国土交通省のWebサイトでは「道路法、都市計画法、建築基準法の3つの法律を一体的に運用」と説明されている。

立体道路制度(国土交通省Webサイトより、クリックすると国交省当該ページに移動します)

同じ大阪ならOCATやりんくうタウン(余談ながらこちらにも『りんくうゲートタワービル』がある)、東京なら渋谷マークシティや虎ノ門ヒルズ(&環状2号線)などがそれに該当する。土地所有者は土地を売却しなくて済むのが利点だ。

制度第一号としてさっそく活用したゲートタワービル。しかし言うまでもなく、施工する側は大変だ。「阪神高速道路公団と協議しながら、同時並行的に作業を進めていった」と渡邊さんは当時を振り返る。

「同じ敷地内で、阪神高速さんも高速道路桁を支えるピア(橋脚)をつくる工事を進めていました。通常だと、道路の桁は大きなクレーンを持ってきて夜間を利用して架設するんですが、ゲートタワービルでは建物の中を通るので巨大なものを直接架設するのが難しいこと、夜中だけでは工期もかかってしまうことが分かりました」

そこで阪神高速道路公団との協議の結果、ビルの外側にタワークレーンを建てて、鉄骨工事と同時に、桁をタワークレーンでつり上げられる荷重まで分割して載せていく案に落ち着いたのだとか。佐藤工業と阪神高速道路公団の見事な連携プレーが、そこで繰り広げられていた。

「阪神高速さんの業者さんが、自分たちの機械を持ってきてピアをつくっていました。我々も、地下工事を含めた鉄骨工事までは阪高さんのピア工事と調整しながら、限られた敷地の中でつくっていったような感じですね。

阪神高速さんからすれば、近接で建ち、かつ建物の中を通るなんて非常にレアなケースだったと思います。だから『第一号だし、お互いに協力してやりましょう』という感じでした」

阪神高速道路公団側は、当初送り出し工法を予定していたそうだが、いかんせん時間がかかる。そこで採用されたのが「細分割架構法」だ。高速道路を25ピースに細分割して、タワークレーンを利用してパズルのように組み立てる方法だ。

どちらか一方が速く進みすぎても、また遅すぎても困る。互いに横目で進捗を見つつ、話し合いをしながら進めていった。結果として、夜間工事で3か月以上かかるはずだった阪神高速道路の工期は、わずか日中5日間で完了したのである。

1
2
3
 
WRITER
「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
建設転職ナビ