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生きた建築ミュージアム フェスティバル大阪2019レポート【3】大阪の商いを支える雄弁なオフィスビルたち

生きた建築ミュージアム フェスティバル大阪2019レポート【3】大阪の商いを支える雄弁なオフィスビルたち

全国の建築ファンのみなさま、こんにちは。ロンロ・ボナペティです。

お待たせしました。年に一度のお祭、「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2019(イケフェス大阪)」レポートの後編をお送りいたします。

前編は商人の町・大阪の華やかな文化を体現した建築の数々を通して、庶民が担ってきた大阪の建築文化をご紹介しました。

レポート後編では、大阪の商業活動を下支えしてきたオフィスや銀行、住宅といった立役者たる名建築を見ていきたいと思います!

キーワードは「過剰さ」?

さて商業活動を支えると言っても、決して縁の下で慎ましくしないのが大阪らしい建築の在り方。

まずはこちらをご覧ください。1925年に当時のオフィスビルとして西日本一の規模を誇った旧「ダイビル本館」を保存活用したダイビル本館です。

ダイビル本館エントランス。外壁に使われているレンガは、解体時に約18万個を手作業で取り外し、一つひとつ掃除してうち95%を再利用したそう。作業員の方の丁寧な仕事により見事に蘇りました

旧ダイビル本館は、東京タワーの構造設計に携わった内藤多仲、日本の近代建築の大家である渡辺節、そして昭和期を代表する建築家のひとり、村野藤吾も渡辺事務所の所員として設計に関わった、中之島のシンボルでした。

建て替えにあたり、旧ビルの意匠を継承するため、さまざまな方法が取り入れられました。そのまま部材を残して保存された部分、オリジナルの建築を型取りして新しくつくり直した部分、また当時の雰囲気を再現した空間や、旧館の意匠を継承しつつ、新たにデザインされた箇所など、保存再生のさまざまなグラデーションをひとつの建築で楽しめます。

今回は当日先着順で行われたダイビル関係者の方による見学ツアーに参加し、隅々まで解説していただくことができました。

エントランス部分のアップ。多くの部材が再利用でき、部分的に欠損があった箇所は再建時に補完されました。構造材と一体となった装飾を引き剥がす作業が難工事だったとか

復元されたエレベーターホール。かつては左右それぞれ3つずつエレベーターが並んでいましたが、現在の用途に合わせ開口を大きく変更しました。床のタイルは一枚一枚位置を記録して並べ直し、天井の装飾は型取りして新しくつくり直したもの

旧ビルの屋上階にあったサロン、「大ビル倶楽部」の「雰囲気を再現」した1階の「ダイビルサロン1923」。現在は平日の日中に開放され、待ち合わせスペースとして活用されています

隣接して設けられた緑地空間から見た再生部分と新築部分の接合部とその寄り(下)。現代的なオフィスとして十分な要求を満たしているからこそ、歴史の保存継承もできたのでしょう

左手側が旧本館の再生部分、右手の影になっている部分が新築部分。デザインを受け継ぎつつ、新築であることがわかるように、また現代のオフィスに相応しい軽快なイメージを与えることが意識されたそうです

近代的な商業活動に欠かせないのが、銀行や証券取引所といった金融機関。

イケフェス大阪では「これでもか!」というほど、お金に関わる名建築が公開されました。

1922年に建設された銀行・新井ビルは、現在テナントとして貸し出され、建築事務所やデザイン事務所が多く入居しています。

新井ビル外観。神戸を拠点に活躍した河合浩蔵による設計で、装飾性を抑えた落ち着いたデザインからは、古典的な様式建築からの脱却を模索した様子が伺えます。

空きテナントを活用してビルの歴史をまとめたパネル展示も開催されました。イケフェスでの公開を期に契約が決まる、なんてことも起こるかも?

最上階階段室の植木鉢。かつては階段室の吹き抜けにエレベーターも設置されていたのだとか。古い建築ながら天井の高い明るい空間が印象的でした。大阪の建築を知る上で「過剰さ」はひとつのキーワードと言えそうです

1階の旧営業所の吹き抜け空間は、人気スイーツ店「五感」の本店になっています。こちらはイケフェス大阪の公開施設ではありませんが、ぜひとも味わっておきたいところ ※撮影には特別な許可が必要です

同じく旧銀行建築を活用した堺筋倶楽部は、現在レストランとして使われています。

堺筋倶楽部夜景

土日は披露宴として使用されることが多いそう。ブライダル関連の催事は本格的な様式建築とよくマッチしています。

取引に使われる「表の空間」と、行員のみが使用していた「裏の空間」が明確に分かれている点も、高級レストランとしては重要なポイントなのでしょう。

天井見上げ。右下の時計は銀行時代の金庫上部に掲げられていたものです

現在はバーカウンターが新設されていますが、基本的には当時の空間が保たれています。

ほかのプログラムが大方終了したイベント最終日の遅い時間帯に開放された堺筋倶楽部には、数多くの参加者の方が詰めかけていました。

あまりにもほかの参加者の写り込みが多く、客席部分の写真をご紹介できないのが残念ですが、夜遅くまでイベントを味わい尽くす、熱心な方々が最後のひと時を楽しんでいました。

当時の姿をそのまま残すエントランス。床のタイルやルーバー、天井部の装飾まで、細やかなデザインが洗練された雰囲気を生み出しています

こちらは辰野片岡事務所設計の保険会社社屋を活用したブライダル施設、オペラドメーヌ高麗橋。プレイベントとして10月24日に無料公開されました。右手に見える鐘楼はヴォーリズ建築事務所が設計を指導した日本基督教団浪花教会のもので、コンサートや牧師による解説ツアーが開催されました

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ロンロ・ ボナペティ
ロンロ・ ボナペティ
「専門知識がなくても楽しめるように建築の魅力を伝える」がモットーの建築ライター・編集者(と名乗る黄色い鉛筆)。大学院の建築コースを修了後、建築系のコンテンツ制作に携わる。国内外の都市や建築を巡って得た気づきをコンテンツプラットフォームのnote(https://note.mu/ronro)で発信中。
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