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いずれ「名建築」と呼ばれる最新建築をたずねて。ロンロ・ボナペティ的“裏”イケフェス大阪2019

いずれ「名建築」と呼ばれる最新建築をたずねて。ロンロ・ボナペティ的“裏”イケフェス大阪2019

「建設の匠」では、全3回にわたって「生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪2019(イケフェス大阪2019)」の魅力をお伝えしました。

おなじみのグリコ看板

長いあいだ、人々に愛され大切に使われ続けてきた建築や、建て替えの際に古い建物の一部を保存再生したものなど、大阪に息づく名建築の数々を商業という観点からご紹介しました。

どの建築にもそれぞれの魅力がありましたが、一方でこのように感じた方もいたかもしれません。

「最先端の建築がぜんぜん取り上げられてないじゃん……!!」

そう、長く愛され使われてきた「生きた建築」も、建てられた当時には時代の最先端の建築であり、最新の取り組みだったわけです。

今回は大阪で楽しめる、これからの日本の建築界をリードする建築家による新しい建築をレポートしていきたいと思います(これを読めば建築ツウを自称できるかも……?)。

まずは旬の商業建築にご注目

観光地としての大阪といえば、まずイメージするのが難波からあの有名なグリコ看板のある道頓堀を抜けて心斎橋を結ぶエリアでしょう。

その心斎橋に、ふたつの有名な商業ビルが建っています。

W.M.ヴォーリズ設計の大丸心斎橋店に隣接するDior心斎橋店は乾久美子氏による設計。

2005年に竣工した本作に先駆けて、Dior銀座店の設計も乾氏は手がけており、独立後間もない30代なかばの乾氏が立て続けにブランドショップを設計したことで、注目を集めました。

Dior心斎橋店夜景。すぐ右隣にはヴォーリズの大丸心斎橋店が建つ、大阪の目抜き通りに位置しています

ファサード上部には大理石の板が用いられており、夜になると発光。上品でありつつも商業施設に相応しい主張の強いデザインです。

通常建築においては重厚さを表現するためによく使用される石材が、このように縦に積まれているさまは、長い歴史をもつハイブランドが、常に先進であろうとする姿勢を示しているかのよう。

下層部分は丸い穴を開けたアルミ板で、Diorの象徴的なデザインであるカナージュと呼ばれる斜めの網目模様を浮かび上がらせています。

板を2層重ねることで、見る位置や昼夜のライトアップの違いで見え方が異なる工夫を仕掛けました。

外壁のアップ。大小の穴が開いた2枚のアルミ板が重なっています

建築家としてみずからの表現を探求しつつ、ブランドコンセプトに寄り添う設計が感じられます。

乾氏は大学院修了後、Louis Vuittonなどの店舗を数多くデザインした青木淳事務所で実務経験を積みました。

店舗空間の設計に踏み込むのが難しい商業ビルにおいて、その経験はバランス感覚のキープにつながっているのでしょうか。

 

Dior心斎橋店から歩いてすぐのところに、藤本壮介氏によるユニクロ心斎橋店が建っています。

心斎橋商店街の入り口という角地に立地するユニクロで、やはりファサードのデザインに力点が置かれています。

「ユニクロ」の文字が浮かび上がる外壁。日中は壁面内部のLEDをオフにし、白色の外壁に生まれ変わります

赤と白の正方形が並んだ壁面をよく見ると、一枚一枚がひとつのドットになっていて、ユニクロのブランドロゴが映し出されていることが分かります。

カタカナ表記の「ユニクロ」と、アルファベット表記の「uniqlo」が、交互にあらわれるのを行き交う人のどれだけの人が意識しているのか……。

素通りする人たちを眺めつつ、教えてさしあげたくなる気持ちをグッとこらえて店内へ。

内部は天井や壁が鏡貼りになっていて、店内の様子が写り込んでいます。

これは「ユニクロといえば棚」という藤本氏のインスピレーションがきっかけとなったもの。

入口から店内の様子(編集部にてぼかし処理済)。中央の筒に店内を上下するマネキンが見えています 天井・壁面には鏡が使われ商品が反射しているのが分かりますでしょうか?

同じ商品が複数色、複数サイズで多数展開され棚に積み上げられるユニクロの商空間の特徴を、視覚的に拡張したデザインです。

また入口部分は最上階まで吹き抜けになっていて、イチオシ商品を着たマネキンが上下に行ったり来たりするシュールなショーディスプレイ。

この店舗の設計には、トータルプロデュースに佐藤可士和氏が関わっており、藤本氏にユニクロのブランドイメージとして「合理性を突き詰めた先に生まれる美意識」と話したそう。

商体験を常にアップデートしているユニクロの合理性を建築家が突き詰めるとこのような空間になるのかと、竣工から9年経っても色褪せない新しさを感じた建築でした。

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WRITER
ロンロ・ ボナペティ
ロンロ・ ボナペティ
「専門知識がなくても楽しめるように建築の魅力を伝える」がモットーの建築ライター・編集者(と名乗る黄色い鉛筆)。大学院の建築コースを修了後、建築系のコンテンツ制作に携わる。国内外の都市や建築を巡って得た気づきをコンテンツプラットフォームのnote(https://note.mu/ronro)で発信中。
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