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いずれ「名建築」と呼ばれる最新建築をたずねて。ロンロ・ボナペティ的“裏”イケフェス大阪2019

いずれ「名建築」と呼ばれる最新建築をたずねて。ロンロ・ボナペティ的“裏”イケフェス大阪2019

建築家のリノベで新たな価値を獲得

近年、建築家にとってリノベーションも重要な仕事のひとつとなっています。

前回までのイケフェス大阪レポートでもご紹介したように、かつては著名な建築家が設計した建築であったり、財を成した資産家が力を入れて建てた建築が保存活用されるケースが一般的でした。

しかしここ最近では、特別注目されるようなものではなかったなんの変哲もない建築が、建築家によるリノベーションによって新たな価値を生み出す事例が増えています。

 

大阪を拠点に活動するdot architectsが手掛けた千鳥文化は、もともとこの土地に建っていた築およそ60年の複数の住宅をリノベーションして、ひとつの建物に統合したもの。

クリエイターが個展を開催するアートスペースや、常設の展示空間、食堂やバーが一体となった文化施設になっています。

改修にあたりdot architectsは部材ひとつひとつを記録し、そのまま使用できる箇所、新規部材により補強が必要な箇所など、地道に実測・調査を進めていったそう。

外観。白い看板が突き出している部分から手前がすべて千鳥文化。複数の建物が連結されています

内部空間は、どこからどこまでがひとつの建物だったのかも判別の付かない、まるで迷路のような不思議な空間になっています。

2017年に第一期改修工事が完了し、現在は隣接する棟の改修がはじまっている千鳥文化は、竣工2年にして早くもイケフェス大阪の登録物件となっています。

吹き抜けのエントランスホールは常時開放され、地域のコミュニティスペースとなっています。新旧の部材が混在し、容易には全容を把握できない理解しがたさが魅力を生んでいます

この日、食堂に立っていたのは、アートスペースで個展を開催中だというアーティストさん。

他県から展覧会のために引っ越してきて、近隣に住みながら制作をしつつ、食堂スタッフとしても働かれているそうです。

奥のギャラリースペース。現代美術の展示空間として活用できる性能も担保

千鳥文化のすぐ近くに事務所を構えるdot architectsのメンバーは、週に一度はバーテンダーをするらしく、「若い建築家と話をしたい」と遠方からやってくる建築学生も多いのだとか。

千鳥文化が建つ北加賀屋は、小規模なアートスペースやクリエイターが活用するイベントスペースなど、拠点が点在していました。しかしそれぞれ独自の活動をしており、包括的な情報を得られる場所がなかったのだとか。

千鳥文化すぐそばにあったペインティング 小さく点在するムーブメントが、千鳥文化を必要とする文化的土壌を形成していました

この千鳥文化は一帯をつなぐ拠点として、また大阪の新たな文化拠点として存在感を発揮していました。

 

もうひとつ、若い建築家によるリノベーション作品をご紹介しましょう。

SUPPOSE DESIGN OFFICEによるBIOTOPです。

洗練されたブティックが多く集まるエリアにBIOTOPも建っています。屋上にはあふれんばかりの植物が

心斎橋や御堂筋といった商空間から少し離れた、アメリカ村にほど近いエリアに位置する商業施設です。

どこにでもありそうなオフィスビルがリノベーションされ、ライフスタイルショップとブティック、屋上にルーフトップガーデンをもつレストランを構える商業施設になっています。

観光客であふれる心斎橋に対し、このあたりは地元の買い物客が多い印象。

若者向けの洗練されたショップが立ち並び、ガイドブックには載っていない大阪のリアルがうかがい知れます。

店舗外観。構造体以外の部材を一度すべて取り払って、開放的な空間に生まれ変わりました

無骨な素材感の既存建築から緑があふれる外観やルーフトップのレストランからは、物理的にも精神的にも開放的な印象を受けます。

「この開放感はどこから来ているのかなぁ」と考えていたら、中之島をはじめとするリバーサイドのエリアに、近年オープンテラスのバーやレストランが増えていると思い至りました。

リバークルーズも盛んで、水辺空間を楽しもうとするムーブメントが町中の建築空間にも影響を与えているのかなぁと感じます。

設計者が直接的に参照しているかどうかは別として、ある時代ある場所の文化を形成しているバックボーンが、建築のデザインに影響を与えるのは当然のこと。

建築家が語る設計意図を知るだけでなく、実際にその場所を訪れる際には、そうした眼には見えないバックボーンの把握も、建築を深く知るうえでは欠かせませんね。

 

先人たちが築いてきた建築文化のうえに、新しい建築の波が押し寄せる大阪。

ますます目が話せない建築シーンを追いかけるためにも、大阪の生きた建築をまとめた特集もぜひご覧ください!

 

【生きた建築ミュージアム フェスティバル大阪2019レポ―ト】

【1】「大阪の建築文化への“先入観”を、建築家・前田茂樹さんにあっさり覆された件」

【2】「彩りもはなやかな商業建築たち」

【3】「大阪の商いを支える雄弁なオフィスビルたち」

 

 
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WRITER
ロンロ・ ボナペティ
ロンロ・ ボナペティ
「専門知識がなくても楽しめるように建築の魅力を伝える」がモットーの建築ライター・編集者(と名乗る黄色い鉛筆)。大学院の建築コースを修了後、建築系のコンテンツ制作に携わる。国内外の都市や建築を巡って得た気づきをコンテンツプラットフォームのnote(https://note.mu/ronro)で発信中。
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