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ワザ・モノ

そうだ京都駅ビル、行こう。ロンロ・ボナペティが探る原広司建築の“意図”

そうだ京都駅ビル、行こう。ロンロ・ボナペティが探る原広司建築の“意図”

さあ、やって来ました京都駅!

……え? そこは「やって来ました京都」じゃないかって?

ご安心ください(なにが)。今回は「『名建築の横顔』特別編」として、建築家 原広司による大作・京都駅ビルの魅力に迫ってみたいと思います。

 

いや、まぁ、筆者も本当ならイケフェス大阪2019の取材にかこつけて、京都をまったり観光したかったんですよ。

しかしそんな下心に待ったをかけたのが、他でもない筆者の京都駅ビルへの異常な愛情でした。

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ことの発端は2019年10月某日。大阪の名建築を楽しむ祭典、イケフェス大阪2019の模様を「建設の匠」で書きたいと編集長に提案したことからはじまりました。

ロンロ イケフェス大阪2019、連載テーマにもぴったりだし、取材に行かせてください!

編集長 おお!  ぜひお願いしたいですねぇ。ちなみにどんな内容を考えてます?

ロンロ あくまでイチ参加者として、イベントを楽しんだ様子をレポートとしてまとめたいです。取材結果次第で記事2本は書けると思います。それからもし可能であれば、ガイドツアーも務めてらっしゃる建築家の前田茂樹さんにもインタビューしたいなと。

編集長 いいですね。ちなみにその出張取材で記事3本以上の獲れ高があれば……(ごにょごにょ条件提示)……いかがです?

ロンロ (よっしゃ!)じゃあイケフェス大阪2019の番外編として、「大阪の若手建築家特集」で1本、「生きた建築 in 京都」で1本どうでしょう。原広司さんの京都駅ビル、好きなんですよ~。あれだけ巨大な生きた建築もそうそうないんじゃないでしょうか?

編集長 わかりました、お願いします。頑張ってくださいね~!

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……というわけで、来てしまいました。京都駅(二回目)。

なんとか獲れ高を確保した上で、ちゃっかり京都観光も楽しみたいぞ。しかし前日の深夜に大阪のホテルへチェックイン、帰りの時間を考えると、15時には京都を離れなくてはなりません。

はたして無事に取材を終え、かつプライベート京都観光も楽しむ時間も残すことができるのか?

景観論争を呼んだ巨大建築、20年後の現在

さて、「京都駅で1本書く」と宣言したものの、どうしたものか。

まずは作戦を立てなければと、腹ごしらえを兼ねてモーニングを。

”駅”と言いつつ、駅舎としての機能はほどほどに、百貨店大手の伊勢丹や劇場、ホテルに加え、随所に飲食店も備えた複合商業施設。それが京都駅という建築の機能的な側面です。

巨大な大屋根の下、半屋外のテラスも持つカフェに入ると、なにやら謎の物体が……。

店員さんに尋ねたところ、「換気口だそうです。カタチには意味がないらしいんですけど」とのこと。

丸みを帯びた換気塔。右手に見えるパラソルが並んだ場所がカフェのオープンテラス

なるほど広大な地下街も有する京都駅、大きな換気塔も必要なのは納得です。

それにしても、アルバイトの店員さんも気になって店長に確認したくなるほど、見る人の興味をそそる造形を随所にもつ建築です。

大学生だというこの方は、「日常的に英語を使うバイトがしたい」という動機で京都駅をアルバイト先に選んだのだそう。「海外からのお客さんがいまたくさん来ていらっしゃるので、良いトレーニングになっています」

たしかに京都を観光するのであれば、どのような移動手段で来るにしろ必ず京都駅がスタート地点になります。

地下のお土産エリアでは各店趣向を凝らしたデザインが楽しめます

原さんという有名な建築家が設計したんですよ、と伝えると、「そうなんですか。ごめんなさいよく知らなくて。ただ、毎日たくさんの方が屋上広場に上がっていきますね。京都の町を観光しに来ているのに不思議です」

京都駅で好きな場所はありますか? との質問にも、特に意識したことはないとの回答。

建築好きであれば遠くからわざわざ見に来るものであっても、日常的に接している人からすれば、特に意識する対象ではないのは当然です。

 

一方で、国際設計競技により原案が選定された京都駅ビルは、1997年の竣工当時には「京都の景観を損なう」「南北を分断する壁になる」と地元の反発も呼びました。

1999年11月号で『建築ジャーナル』誌が調査した「京都の景観を破壊した建築」ランキングにおいて、堂々の1位を獲得したほど。

おそらくはそのような議論が起こっていたことすら知らない人が現場で働いていると考えると、約20年を経て、徐々に京都の人々にも受け入れられていったのでしょう。

室町小路広場より屋上へ伸びる大階段を見たところ

京都に来ながら京都駅を出ずに京都観光を完結させようとしている筆者はなんとも不可解な観光客だな……と思いつつ、西側の屋上広場へと進みます。

平安京の時代から続く京都の町割りに対応し、大きな抜けがつくられているこの広場は「室町小路広場」と名付けられ、さまざまなイベントを催すスペースとして活用されています。

開放的な大階段に腰を下ろし、お弁当を食べる人の姿も。

巨大な吹き抜けを見下ろす心地良い空間には、目的がなくとも登ってみたいと思わせる魅力があります。

広場から町の方を見ると、巨大な門型の抜けになっています。京都駅全体を京都という文化に触れる門に見立てた原氏のコンセプトを反映したもの。随所に彫刻作品や、不思議な造形の換気装置が

最上階まで登ると、小さな庭を取り巻くようにベンチが配置されていました。

設計にあたり、できるだけ多くの公共スペースを確保することと同時に、「ひとりでの来訪」を強く意識した公共空間の構築を企てたのだとか。

「行き場のない人間のシェルター」と表現された空間は、他者との程よい距離感を自分で選択することのできる、さまざまな取っかかりが用意されています。

出勤前に気ままに過ごすサラリーマンでしょうか。夜間はカップルの憩いの場になっていました

ひとりたそがれる男性。その視線の先に見えるのはもちろん京都駅

巨大なガラス屋根が空中のブリッジを覆っています。壁面にはさまざまな種類の大理石が使用され、鏡面ガラスに風景が反射し、複雑な景観をつくりだしています

東西およそ150m、南北およそ65m、高さ60mという巨大な複合施設のうち、面積的に駅の機能をもつのはたったの20分の1。

それでも原氏は、あくまで“駅”として設計することにこだわりました。

そのため、利用者が建物の全貌を視覚的に把握できることを意図し、巨大な谷底の最下部に駅としての機能を集約しています。

この大階段は伊勢丹の屋上になっており、半屋外空間とすることで容積率にカウントされない巨大な公共スペースを実現したのだそう。

夜の大階段。この日はハロウィンのイルミネーションが行われていました

多くの人が行き来する“谷底”

南側のコンコース。階段の先から見えるのは、やはり京都駅

京都駅から京都駅を見下ろすと、さきほどまで自分が居た場所を俯瞰して見ることになります。ちょっと不思議な体験ですね

「多様な経路選択を可能にする」という原氏の言葉通り、谷の上を階段を使って横断する以外にも、東西をつなぐオープンなコンコース、商業施設内を通って反対側へ出るルート、また空中を貫くブリッジも数多く用意されていて、京都駅を味わい尽くすミッションを抱える筆者にはなんとも難儀な建築でありました。

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WRITER
ロンロ・ ボナペティ
ロンロ・ ボナペティ
「専門知識がなくても楽しめるように建築の魅力を伝える」がモットーの建築ライター・編集者(と名乗る黄色い鉛筆)。大学院の建築コースを修了後、建築系のコンテンツ制作に携わる。国内外の都市や建築を巡って得た気づきをコンテンツプラットフォームのnote(https://note.mu/ronro)で発信中。
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