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【建築都市】7月26日に金沢にてミュージアムが開館!昭和の名建築家「谷口吉郎」とは何者か?

【建築都市】7月26日に金沢にてミュージアムが開館!昭和の名建築家「谷口吉郎」とは何者か?

建築家が設計した博物館や美術館は数知れない(←当たり前)。しかし、建築家自身の功績を展示するミュージアムは意外に少ない。しかし2019年7月、ある建築家の記念施設が誕生することをご存知だろうか?

渡欧で古建築の美点に目覚める

建築こそ歴史の花であろう。 過去の花、現代の花、色とりどりの中で、いつも私の心をひくものは、 その建築の美しさにひそむ清浄な意匠心である。 『雪あかり日記』

上の言葉をのこした谷口吉郎氏(たにぐち・よしろう、1904~1979年)は、石川県金沢市出身で、昭和を生きた建築家である。

金沢市にある九谷焼窯元の長男として生を受けた谷口氏。東京大学工学部建築科で学び、第2次世界大戦前までは西欧近代建築に傾倒する。この頃は建築の機能性を重視し、慶応義塾大学日吉寄宿舎や東京工業大学水力実験室などを設計した。

そのターニングポイントは1938年の渡欧だった。日本大使館の日本庭園を設計するためにドイツ・ベルリンにわたって、ドイツ古典主義建築家シンケルの作品に接し、古い建物を残すことの素晴らしさを感じ取ったのである。

著書『雪あかり日記』の中で「建築こそ歴史の花であろう」と述べているように、モダニズムの波が押し寄せる近代建築のなかで、日本建築の様式を取り入れた近代建築を造り上げ「日本の美」を体現していったのだ。

日本の美を体現した「ホテルオークラ東京」

谷口氏は「ホテルオークラ東京」「東京国立博物館東洋館」「東宮御所」など、日本を代表する数々の建築設計に携わってきた。

旧ホテルオークラ東京(1962年)は谷口吉郎氏、小坂秀雄氏、清水一氏、伊藤喜三郎氏、岩間旭氏ら5人によって設計された。谷口氏が担当したのは本館ロビー、オーキッド・ルーム、オーキッド・バー(当初は外装も担当する予定だった)。特にロビーは国内外の建築好きから多くの喝采を浴びた。

昭和期のホテルは入口からフロントへの導線がはっきりしている「米国式」だったが、谷口氏はフロントをロビー内では人目につきにくい箇所に位置させて、ホテルの顔と呼ばれるロビーをシックで高級感のあるものにした。このような「欧州式」を取り入れたことが評価された理由のひとつだろう。

本館は2015年に閉館した。2019年9月に新たに生まれ変わった新本館は、谷口吉郎氏の息子である谷口吉夫氏が設計を担ったというのだから、そのお披露目が楽しみすぎる……。

旧ホテルオークラ東京フロント(写真/PIXTA)

1968年に開館した東京国立博物館東洋館は地上3階建ての広々とした建築。東洋館の外観は谷口氏らしく非常にシンプルだが、切妻屋根や何本も立ち並ぶ柱が「日本建築」感をたしかに醸し出している。

東京国立博物館東洋館(写真/編集部)

東洋館に一歩足を踏み入れると中央は吹き抜けで、その外観からは想像できないほど高尚な空間が広がっているので、ぜひ一度訪ねてみていただきたい。耐震補強工事とバリアフリー配慮のため2013年1月にリニューアルしたが、壁のタイルや照明器具などの設備は谷口設計の意匠を引き継いでいる。

東宮御所(1960年)は地上2階、地下1階建ての鉄筋コンクリート造。広大な敷地には季節を彩る樹木が並び、建物の内外から和の風景を楽しむことができる。建物は4棟からなり、それぞれ渡り廊下でつながっていて、家屋を行き来する場面でも自然を感じられる仕組みだ。玄関から広間にかけては石が主体、大食堂と大応接室は木をメインに扱うなど、素材一つひとつにもこだわりを見せている。

ちなみに4月30日まで皇太子一家が住んでいたが、天皇即位に伴い「赤坂御所」に改称している。ここにいずれ上皇夫妻が引っ越したあかつきには「仙洞御所」に改称するそう。いつか役に立つマメ知識である。

東京国立近代美術館(1969年)。「高畑勲展」がはじまりましたよ。

変わり種としては秩父セメント第2工場も手がけた(写真/Docomomojapan)

そして谷口氏は、千鳥ヶ淵戦没者墓苑(1958)や沖縄戦没者慰霊墓苑などを手がけた「碑の建築家」でもある。そういえば、6月23日は沖縄戦終結の日(沖縄慰霊の日)、6月24日が彼の誕生日というのはなにかの偶然か……。

沖縄戦没者慰霊墓苑(写真/Adobe Stock)

 

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「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部
「建設の匠」編集部の中の人。ひとりで取材したり記事を書いたり写真を撮ったりしております。ツイッターは@KensetsuTAKUMI、フェイスブックは@kensetsutakumi2018。
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